一般社団法人 米国医療機器・IVD工業会

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報道・医療関係者

医療イノベーション推進と医療機器産業の発展

2011年8月1日

キーワード

八山 幸司 氏
内閣官房 医療イノベーション推進室 企画官

 

我が国は、医療に限らず全ての分野において、常識に囚われず、まったく新しい発想のもと抜本的な改革を行っていかなければ、いずれ立ち行かなくなるだろう、と言われてきました。東日本大震災を経験し、改めて日本中が改革の必要性を痛感したと思います。医療イノベーションの取り組みは、日本の医療のあり方を抜本から見直し、医療分野を真の成長産業として育成する動きです。その取り組みをご紹介します。

新成長戦略における医療イノベーションの位置づけと政府の推進体制

昨年政府が策定した新成長戦略では、医療・健康・介護分野における成長戦略、いわゆる「ライフ・イノベーション」を重要な柱と定めています。ライフ・イノベーションでは、2020年までに45兆円の市場と、280万人の雇用を生み出すことを目標にかかげ、医療・介護・健康関連産業を日本の成長牽引産業として明確に位置づけています。ライフ・イノベーションの中で、特に医療イノベーション(医薬品、医療機器や再生医療をはじめとする最先端の医療技術の実用化)を促進し、国際競争力の高い関連産業を育成し、その成果を国民の医療・健康水準の向上に反映させることを目指すため、官房長官を議長とする「医療イノベーション会議」が設置され、更に、医療イノベーションを推進する「国の司令塔」として、内閣官房に「医療イノベーション推進室」が設置されました。

医療イノベーションの目標

高齢化が進展する我が国において、医療は従来以上に高度で多様なニーズに対応することが求められています。このような中、医療イノベーションの推進により、これまで治療困難であった病気を克服し、病気の予防や重症化予防による健康寿命の延長を図ると共に、要介護人口の増加抑制による介護負担の軽減や副作用回避による無駄な医療費の削減、効果予測による医療費の有効活用により、費用対効果が高く、世界最高水準の医療を国民に提供することを目指しています。また、日本発の医薬品・医療機器を積極的に開発し世界に発信することで、医療分野が今後の我が国の経済成長を担う新しい成長産業に育つことを目指しています。

そのために、①我が国の英知を結集し、国内の「強み」を最大限に活かした世界に通用する技術の実用 化、②抜本的なシステム改革を目指し、他方で短期的な成功事例も生み出す、③産学官の縦割りの弊害を排除し、重点分野への大胆な予算投入と規制改革、④更に、東日本大震災の復興プランと医療イノベーションとの連携による未来志向の新しい医療システムを構築、を原則として検討を進めています。

医療機器分野の具体的な取り組み

医療機器産業の発展には、日本の強みである「ものづくり」企業がもっと医療機器分野に参入し、強い産業構造を持つ産業となることが必要です。特に、高い技術力をもつ中小企業が医療機器分野に参入することが不可欠です。そのためには、異分野企業が参入しやすい制度、インフラ、ネットワークづくりを政府が支援し、医療機器業界をもっと活性化させることが必要と考えています。

また、日本で生まれた医療機器が世界に貢献していくことが必要です。そのためには、日本国内に世界中の多くの研究が集まるような、研究しやすい環境、ビジネスしやすい環境を作る必要があります。また海外に発信する際には、標準化戦略も考え、医療機器と手技・トレーニング等をパッケージにした医療システムを世界に展開していく戦略が必要です。そのためには、外国との連携は不可欠と考えています。

更に今後は、健康・予防などの保険外の分野にも医療機器の活躍の場が広がることが期待されます。また、今後医療に革命的な変化をもたらすと予測される再生医療や個別化医療の進展により、医療機器に求められる役割も変わってくると考えられます。このような中長期的な医療システムの変革を見据えて、今後世界中が求める医療機器の開発に取り組むことが必要と考えています。

他方、革新的な医療機器を開発する際のリスク軽減方策の検討も重要です。法制度の整備も必要ですが、リスクとベネフィットの考えに対して国民的な理解を得ることも大切です。そのためには、正しい情報を発信し続けるという地道な努力が重要ですし、風評被害の問題にもきちんと取り組む必要があります。

これらの取り組みにより、我が国の医療機器産業が国際競争力の高い産業に発展することを目指しています。

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