一般社団法人 米国医療機器・IVD工業会

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報道・医療関係者

最新医療技術を円滑に患者のもとへ

2011年8月1日

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杉元 順子 氏
医療ジャーナリスト 日本医学ジャーナリスト協会 副会長

 

新成長戦略で、医療が日本の成長牽引産業に位置づけられました。人材難、財政難の現状からは、いささか心許ない感があります。 

しかしこれを補う重要な要素が技術革新と制度でしょう。医療の質、経済、産業面ともに先進医療技術に負うところは大きく、特に低侵襲で患者にやさしい医療を可能にすることは時代のニーズであり、その役割はますます期待されています。

患者を的確に効率よく診断・治療し、命を支える医療機器は、目を見張るばかりに急速な進歩を遂げています。しかし日本では今、医療機器産業の国際競争力は低迷し続けています。

医療機器のグローバル市場規模は約3,350億ドル(20兆円超)といわれ、アメリカが市場シェア第1位(42%)でヨーロッパ(34%)に次いで日本は10%にとどまっています。数年来の横ばいで、輸入超過
が5,000億円という状態です。

医療機器団体では輸入超過の原因を分析してバランスの確保に努めていますが、医療政策上の問題のほかに治療機器の大半が輸入品に頼っているということにも原因はありました。

日本では元来、画像診断機器が強く輸出に強い筈にもかかわらず、新興国に比べて輸出が伸び悩んでいるのはなぜなのでしょう。

関係筋によると、1つには日本のメーカーが治療機器を手がけることに消極的なのは、国民性としてリスクを取りたがらないこと、つまり何かあったときに叩かれるのを避けたい意識があるようです。しかし、日本の医療機器産業の将来を考えると、先進的治療機器の開発にさらに尽力し、いち早く産業化していける体制が求められています。

先進的医療機器が開発されても、医療現場で活用され、患者のために役立たなくては意味がありません。先進医療技術導入の話題が行き着く先には、常態化した日本の医療機器等の承認審査の遅れの問題があります。審査の迅速化を図ることを主な目的に2004年に発足したのがPMDA(医薬品医療機器総合機構)で、改善努力がなされているようですが、7年を経た現在もほとんど改善されていません。窓口の非効率や対応の問題は、現在もしばしば指摘されています。このため止むなくヨーロッパなどで認可を得ることにもなります。この問題は産業界ばかりではなく、せっかく開発された先進医療技術の恩恵から、患者を遠ざける結果となり、社会全体として大きなマイナスと言えます。審査にあたる専門性豊かな要員の不足が大きなネックになっているのです。専門的な人材面の補充の工夫、分野による審査の簡素化など体制面の改善により、デバイスラグ、デバイスギャップの解消を早急に図るべきでしょう。外国からの新医療機器導入や、新興国への輸出にも影響します。何よりも、先進医療技術を円滑に国民・患者のもとへ届けられるようなシステム整備が求められます。そして、日本が真に輝きを取り戻すために、医療関連産業の成長を支えに、医療自体の活力が望まれています。

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