ジストニアに対する理解と最適な治療選択のために
2020年6月1日
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望月 一孝 氏
NPO法人 ジストニア友の会 理事 兼 IT分会長
ジストニアとは、持続的または不随意的に筋肉が収縮したり固くなったりする難治性の疾患です。不自然な姿勢で硬直したり、逆に勝手に動いて止められなかったりなど、日常生活に困難を来し、精神的苦痛も伴います。脳や神経系統の障害が原因とされますが、知能に影響はなく、生命を脅かすような疾患でもありません。
難病情報センターによると、国内には約2万人のジストニア患者がいるとされています。難治性ではあるものの生命に関わる疾患ではなく、また有病率も1万人に数人程度と希少であることから、情報も専門医も少なく、遠距離通院を余儀なくされるケースも見受けられます。
私たち「ジストニア友の会」は、認知度が低いジストニアに対する理解を深め、患者の置かれた状況を改善するため関係各所への働きかけを行い、また患者同士の連携や情報交換の場ともなるべく、患者および医師によって2005年に設立されました。大きな成果としては、2008年から続けた厚生労働省への請願が実り、2015年に遺伝性ジストニアが指定難病医療費助成制度の対象となったことが挙げられます。
ジストニアの治療方法には、主に薬物の内服やボツリヌス毒素の局部注射療法、また外科的療法(脳深部刺激療法[DBS]、脳深部破壊術などの定位脳手術)があります。薬物内服療法や局部注射療法は対症療法となります。定位脳手術のDBSは、手術を行える医師が比較的多く、安全性も高いと言われている一方、機器を体内に植え込む治療法なので、機器の劣化や電池交換のため定期的な手術が必要になり、患者の肉体的、経済的負担が大きくなります。
同じく定位脳手術である破壊(凝固)術は、異常を来している脳組織を直接破壊するため、根本治療となる可能性があります。凝固術で症状が著しく改善した例もみられますが、手術を行える医師や医療機関は少なく、さらに最近、凝固術に必要な医療器具が販売されなくなり、根本治療を切望する患者の寛解の機会が失われるという、大変に深刻な状況となっています。穿頭が不要な、超音波による凝固術もありますが、破壊部位は視床のみのほか、個人の頭蓋骨の形状などにより、現状では誰もが適する療法ではありません。
患者の症状や生活スタイルによって、対症療法、DBS、あるいは根本治療となり得る凝固術など、最適な治療法は異なります。患者が望む治療法が選択できるよう、今後も活動を続けてまいります。