バリューベースヘルスケア、という新たな視点
2021年12月8日
- キーワード
人々の健やかな日常や健康寿命の延伸を目的に、医療技術はイノベーションを繰り返し、進化し続けています。一方で、医療財政の健全化は国家的課題になっています。バリューの高い医療技術を開発・提供しながら日本の医療財政に貢献していく、それがAMDDが目指すバリューベースヘルスケア(以下VBHC)の考えです。
- バリューベースヘルスケア
- 限られた財源の中で、イノベーションを推進し、医療・介護の効果を最大化するためにバリューの観点で医療を評価する考え方。健全な医療財政と質の高い医療の両立に貢献する。
Point
- AMDDは、バリューの高い医療技術を開発・提供することで、質の高い医療と健全な医療財政の両立を目指している。
- 具体的には、患者さん・医療機関・個別技術という3つの視点から、VBHCの推進を考えている。
VBHC実現へ向けてのハードル
VBHCの提言は、前回の2017年に引き続き、今回が二度目となります。前回と比較し大きく変わった点は、医療技術を選択したい立場である患者さんと、適切な医療技術を検討し提示・提供する立場である医療機関のそれぞれに、提案内容を広げていることです。特筆すべき現状の課題として、まず患者さんが質の高い医療技術を選択するために十分な情報が提示されておらず、自身にとって最適な医療技術を適切に選択できる環境にないことが挙げられます。また、医療機関においては、外来で十分な説明をする時間はなく、経済的制約があり、すべての治療選択肢を検討する制度的インセンティブも存在していません。こうした背景から、VBHCを推進し根づかせるためには、個別の医療技術に加え、患者さんと医療機関それぞれの置かれた環境を適切に改善していくことが重要であり、今回の提言ではその具体的な対策案を示しました。「患者さん・医療機関・個別技術」という3つの視点からバランスのとれた活動を通じ、バリューの高い医療への持続的な貢献が実現されることを願います。
バリューベースヘルスケアの実現へのハードル
VBHCの5つの提言
今回のVBHCの提言は、大きく5項目にまとめられます。それは、① 患者さんに医療技術の選択肢が提供される環境の整備、② 医師が有用な医療技術を選択できるようなデータベースの構築、③ 従来の診療報酬体系が医療機関のストラクチャー(構造)やプロセス(過程)評価に基づいているため、一部にアウトカム(成果)評価を加えたい、④ 医療機器や体外診断薬は多様な側面をもつため、様々なエビデンスを柔軟に評価してほしい、⑤ AIやICTの登場に伴い医療技術も急速に進化しているので、評価の枠組みも時代に即したものにしてほしい、ということです。