臨床試験だけでは、示せない価値がある
2021年12月8日
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医療機器の有効性や安全性を確認する臨床試験では示せない価値として、製品の強度、使用回数の削減などがあります。技術革新は、医療現場のオペレーションを軽減したり、患者さんの拘束時間を短くしたりするなどの価値があり、AMDDは非臨床的なこれらのエビデンスも評価されることが重要であると考えています。
- 包括
- 保険医療材料の評価区分はA1(包括)・A2(特定包括)・B(個別評価)・C1(新機能)・C2(新機能・新技術)と分かれている。包括とは、診療報酬項目において包括的に評価されているもの。具体的には、縫合糸、静脈採血の注射針などが存在する。
Point
- 医療機器はイノベーションを繰り返して進化していくが、臨床データ以外で示された有用性は評価されにくく、日本では実質的に認められていない。
- 使用量や使用回数の削減などによって医療経済に貢献することもあるが、評価対象となっていない(体外診断薬や技術料包括の医療機器は、評価基準自体が明確性に欠ける)。
- 医療機器や体外診断薬の評価には、その特性も考慮した様々なエビデンスを考慮することが重要である、とAMDDは考えている。
非臨床的なエビデンスにも注目を
様々なエビデンスを評価してもらうために、AMDDでは3つの方策を考えています。1つ目は、医療機器は臨床的な知見でその有用性を示すことが難しいものも少なくないため、技術的な試験など非臨床的なエビデンスによって、その蓋然性(確実性の度合い)を評価し、期間は限定的であっても医療機器の製品サイクルの短さを考慮したスピーディな評価をすること。2つ目は、使用量や回数の削減が及ぼす影響を、医療経済的な面から評価できないか。つまりは、費用削減効果を評価の基準として認めてよいのではないかということ。そして3つ目は、体外診断薬にもE1 (既存項目)、E2 (既存項目・変更あり)、E3 (新項目、改良項目)という保険適用の区分がありますが、特にE3では革新性や有用性の類型に基づき評価軸を定めて、その有用性を評価すべきであるということです。
体外診断薬のイノベーション
医療機器と同様、体外診断薬も数々のイノベーションによって、その有用性や革新性が臨床現場で認められていると考えます。また体外診断薬は、検査時間の短縮を目的に開発した製品が疾病への早期介入を可能にしたり、検出感度の向上を目的にした製品が新たな疾患の検出に役立ったり、医療者あるいは患者さんという立場の違いによっても臨床的な価値が変わります。それらの点を考慮して、評価軸を定めることが必要と考えます。
具体例:体外診断薬の医療上の有用性・革新性の類型
有用性・革新性 | イノベーションの例示 | 臨床性 | 利便性 |
---|---|---|---|
疾病見落としの減少 | 診断精度の向上感染症におけるサブタイプの追加 | 〇 | |
早期介入が可能 | 早期発見感染症におけるウインドピリオドの短縮 高感度化による早期発見 |
〇 | |
検査時間の短縮検査時間の短縮により早期診断、早期治療介入が可能 | 〇 | 〇 | |
技術向上等により可能になった即時検査ベッドサイド、在宅、開業医の行う簡易検査 | 〇 | 〇 | |
他の疾患も検出 | 感度の向上検出感度向上などにより、従来の検査目的とは ことなる新たな病態・疾病の診断が可能となる |
〇 | |
患者負担の軽減 | 使用検体量の削減新生児、小児などに対しても検査が可能 | 〇 | 〇 |
非侵襲検査患者負担軽減 | 〇 | ||
環境/作業者への配慮 | 環境の配慮放射性廃棄物、医療廃棄物の削減による環境への配慮 作業者への配慮 医療安全対策 精度管理業務の軽減 |
〇 | |
あらたな病型分類(鑑別) | 適切な治療の選択に寄与 治療方針の決定に寄与 |
〇 | |
個別化医療への寄与 | 治療効果の予測 安全性の予測 用法・用量の最適化又は中止の判断 病態/予後リスク |
〇 | 〇 |
その他 | 客観的判断より、現行項目と比較して明確に臨床的有用性、 利便性の向上が証明できるもの |
現在、臨床検査振興協議会検討継続中