一般社団法人 米国医療機器・IVD工業会

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米国医療機器・IVD工業会

団体活動報告

患者中心の医療に向けて

2004年10月1日

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先進医療の役割シンポジウム「患者中心の医療に向けて」をテーマに都内で開催

2004年10月15日、先進医療技術の役割を広く紹介することを目的にシンポジウム「患者中心の医療に向けて」を開催しました。シンポジウムには心臓疾患、乳がん、糖尿病の患者会・団体の三代表者が出席し、また東京女子医科大学名誉教授の桜井靖久氏も加わり、それぞれ講演、パネルディスカッションを行いました。会場となった東京・銀座の時事通信ホールには報道関係者、患者の会のメンバー、関心をもつ一般の方々など多数が参加しました。基調講演、パネルディスカッションを通じて、先進医療技術がもたらす患者QOLの向上についても議論が深められ、結論として今後の「患者中心の医療」を考えるとき、医療・医学のリテラシーを患者が持つことが重要であると意見が一致しました。

小委員会の王恵民委員長が開会のあいさつ

シンポジウムの開催に先立って王恵民よりあいさつをしました。このなかで、日本人の2番目の死亡原因である心臓疾患に先進医療技術が大きな役割を果たしているとしたうえで、日本においては制度や規制のちがいなどがあって、患者さんが最新の機器を使えないこともあると指摘しました。患者さんが現在世界で提供されている医療技術を自由に選択できるようにすることが患者さんにとって大切であり、それが「患者中心の医療」ではないかと述べ、今回のシンポジウムを通じて政府や社会に対して情報を発信していく場となるよう期待を表明しました。

桜井靖久氏が基調講演

シンポジウムではまず桜井靖久氏(東京女子医科大学名誉教授)が基調講演を行いました。長年の医療現場での体験、先進医療技術とのかかわりのなかで、医療を4つの側面―科学技術的側面、サービス業務的側面、社会・経済的側面、倫理的側面から分析しそれぞれを説明したうえで、患者中心というときサービス業務的側面が強調される傾向にあるが、本当に患者中心の医療に必要なのは科学技術的側面であると述べました。つぎに生体画像やPTCA、グルコースセンサー(血糖自己測定器)などの具体的な例を挙げこれら先進医療技術が、患者の生活の質(QOL)向上に貢献していること、低侵襲手術器具などによる入院期間の短縮で医療費が削減されていることを説明しました。最後に患者だけでなく、健康な人も普段から医療に関する知識を有することの大切さを語り、持論の「ヘルスケアパーク構想」を紹介して、健康のための社会基盤整備の必要性を訴えました。

「乳がんと生きる」-ワット隆子氏が「あけぼの会」活動を語る

桜井先生の基調講演に続いて患者会・団体の代表者による講演が行われ、最初に「あけぼの会」会長のワット隆子氏が"乳がんを生きる"と題して患者会の必要性-その社会的意義を語りました。「あけぼの会」は自ら乳がん手術を受けたことをきっかけにワット氏が1978年に設立した乳がん手術後のセルフケア・グループです。発足当時は17人でしたが現在の会員数は約4300人に達する全国的な組織となり、海外へも活動の輪を広げています。講演は会の歴史からはじまり、活動として乳がん手術後の患者の助け合いと相互のサポート、乳がんの早期発見に対する啓発活動、ABCSS(Akebono Breast Cancer Support Service=乳がん患者への病院訪問ボランティアプログラム)を紹介しました。ABCSSは欧米で広まっている"Reach to Recovery"の日本版で、ボランティアが病院を訪れて手術後の生活方法などをアドバイスする活動。開始から16年を経過、2000年に「テレサ・ラッサー賞」を受賞しましたが、日本でこの活動を受け入れてくれる病院がまだ少ないとの現状も説明しました。

患者会の役割と責任―日本心臓ペースメーカー友の会副会長の日進氏

次に心臓ペースメーカーに関する患者会、日本心臓ペースメーカー友の会の日進副会長が心臓の仕組みから患者会のあり方、先進医療機器導入に対する見解など幅広い分野について講演しました。日氏も1994年に心臓ペースメーカー植え込み手術を受けており、この経験から「友の会」に入会して以後活発に活動を続けています。同会は患者、医師・医療従事者、機器業界の三者から構成し、医師と患者が対面して話し合える環境を全国各地で提供する、というのが基本方針です。講演は心臓の仕組み、特に「洞結節」が心臓の動きに果たしている機能、さらにこの刺激伝導系の発見が日本人(田原淳博士)によって1903年に行われた偉業であることなどを説明しました。次にペースメーカー埋め込み者数が全国で30万人程度と推定され、会員数はまだ4000人となっていますが知名度の向上もあって毎年500人規模で会員数が増加していると、活動の広がりを語りました。これまでの活動では電磁波問題(電磁波のペースメーカーに与える影響の有無)やAED(自動体外式除細動器)一般使用に向けての協議を説明、当面の課題として電磁波への余分な不安解消、優れた機器の早期導入などを挙げるとともに「ペースメーカーは社会全体の医療費削減に貢献している」と指摘、先進医療技術の普及を訴えました。

糖尿病と共に生きる―東京都糖尿病協会会長の田和允宏氏

最後に糖尿病患者団体として東京都糖尿病協会会長の田和允宏氏(社団法人日本糖尿病協会専務理事)が「糖尿病と共に生きる―QOLと血糖値コントロールの重要性」と題して講演しました。まず昭和30年代からスタート、昭和62年に社団法人になった歴史を紹介、次いで糖尿病が「それだけでは死因にならない。恐いのは合併症」で、それだけに早期発見が重要であることを強調しました。糖尿病患者は平成14年で740万人と推定されこれだけで相当な人数ですが、さらに「予備軍」(HbA1cが5.6~6.0)は880万人に達するとみられています。しかし治療中の患者は212万人に過ぎないと指摘しました。糖尿病は合併症が複数となることも多く、合併症が4種類になると治療費が3倍になると注意を喚起しました。このためにも早期発見が必要で、血糖値のコントロールが大切と訴えました。一方で、糖尿病は血糖値をコントロールさえすれば、通常の社会生活が送れることも説明、自己管理の重要性の理解が広く進むことに期待していると結びました。

田辺功氏を司会にパネルディスカッション

以上4氏による講演を受けて、朝日新聞編集委員の田辺功氏をコーディネーターとして4氏によるパネルディスカッションが行われました。会場からの質問に答えることをベースにそれぞれが意見を交換する形で行われ、乳がん健診の問題から入りました。これについては日本では乳がん健診を受けている人が少ないとの指摘があり、早期発見に向けての検査では、マンモグラフィーや生検(マンモトーム)が貢献しており、触診だけではない先進医療技術の発展が重要な要素であるとして意見が一致しました。そのほか、ペースメーカーの進歩により適応疾患が広がり、より多くの方々に適応されるようになった点や、糖尿病のモニタリング機器の小型化や検査に必要な血液量の減少など技術の進歩が強調されました。

さらに、先進医療と保険適用、先進医療の導入スピードについても意見を交換しました。保険適用については、薬剤などとは違い医療技術は保険適応に時間がかかるという問題点が挙げられ、理由として「先進医療技術の担う役割の認識不足」が述べられ、さらなる理解の浸透を促しました。また、導入のスピードに関しては、糖尿病のモニタリング機器の最新型の導入を例にとり、「日本では予防が認められていない」「新しい機器を導入すると医療費が高額になるという誤解がある」などが原因のひとつとしながら、「しかし患者は待てない」と訴えました。

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