一般社団法人 米国医療機器・IVD工業会

AMDD logo

一般社団法人
米国医療機器・IVD工業会

プレスリリース

「医療機器における日中韓三カ国の市場環境比較調査」結果を発表

2011年9月21日

キーワード

―欧米に対してだけでなく、中国・韓国に対してもデバイスラグが発生―
日本の患者さんが享受できる医療機器は中国や韓国とくらべても時代遅れのものになる可能性

米国医療機器・IVD工業会(AMDD)(所在地:東京都新宿区、会長:デイビッド W. パウエル)はこのほど、「医療機器における日中韓三カ国の市場環境比較調査」を行いました。その結果、これまで海外の新しい医療機器および体外診断用医薬品(IVD)が欧米諸国よりも大幅に遅れて日本に導入されるため、日本の患者さんがその製品の恩恵を受ける機会が遅れるというデバイスラグの問題が、欧米諸国に対してだけでなく、アジアの中国、韓国の市場に対しても発生していることがわかりました。

調査の目的

AMDDでは、国民が期待する医療を提供するためには、世界の最新の医療技術を日本の医療現場と患者さんのニーズに応え、安定的に供給していくことが必要であり、そのためにはデバイスラグ、デバイスギャップなどの諸問題を解決することが不可欠と考えています。このような問題意識から、AMDDは、激変する世界の状況下において日本に先進的な医療機器が十分に提供され続けるのか、医療機器企業はアジアにおいても成長の著しい国々を重要視していくのではないか、という問題意識から、今回、日本、中国、韓国の三カ国に関して医療機器企業への調査と分析を実施したものです。

調査の概要

この調査では、記入式のアンケート調査とアジア統括役員への対面の聞き取り調査を行いました。対象は主としてAMDDの会員企業で、一部、日本や欧州に本社を置く、欧州ビジネス協議会(EBC)、日本医療機器産業連合会(JFMDA)の企業も参加しています(調査はAMDDの委託を受けたLEKコンサルティング社によって実施)。調査に参加した企業の主たる参入分野は治療材料、大型医療機器、体外診断用医薬品を網羅しており、アンケート調査では31社から回答があり、聞き取り調査は22社が参加しました。

調査からわかった主なこと
  • 日本と中国はともに重要な市場

    回答企業にとっての各国の現時点での戦略的重要度を7段階で評価した結果、日本が6.2点、中国が5.9点でともに高得点であり、両国とも非常に重要な市場と位置づけられています(韓国は3.8)。しかし他の産業にみられるように中国市場が既に日本を凌駕しているという状況には至っていません。

  • 中国・韓国においては既に日本とほぼ同数の機器が入手可能になっている

    AMDDでは2008年以来、各国で供給されている製品の種類数(銘柄数)を調査していますが、これまでは基本的に日米欧の間での比較でした。その調査では「日本で入手可能な機器は欧米の約半分である」という結果が出ています。2010年の調査では、日本でアクセス可能な医療機器の種類を1とすると米国は2.3、欧州は1.9で、前年とほぼ同様の結果が出ています。今回、同様に日本、中国、韓国で提供している銘柄数を集計してみたところ、わずかながら中国や韓国のほうが日本よりも多くなっており、中国・韓国においては既に日本とほぼ同数の機器が入手可能な状態となっていることがわかりました。

  • 日本は中国と韓国に対してもデバイスラグが発生している

    AMそれぞれの国で2010年に承認された製品において、その承認時期が米国での同一製品の承認時期に比べてどの程度遅れていたかを集計した結果、日本で2010年に承認された製品のうち、42%は米国に比べてデバイスラグが6ヶ月以内でした。同じくデバイスラグが6ヶ月以内であった製品は中国では承認された製品のうちの69%、韓国では71%であり、いずれも日本よりも比率が高いことがわかります。中国と韓国では実質的にデバイスラグの無い製品が2/3を占めており、日本では約1/3が相変わらず2年以上のラグ(遅れ)を経て導入されています。ここ3年間の薬事承認件数は中国、韓国が日本を上回っていることから、デバイスラグが広がる可能性も示唆されます。

    これまで日本のデバイスラグは対欧州、対米国という観点で論じられてきました。しかし、今回の分析結果からは、同様のデバイスラグが中国や韓国に対しても存在していることが示されました。

  • 10年後には中国が戦略的重要度で日本を追い越す

    今後の三カ国の市場の戦略的重要度について10年後を予測したところ、中国の6.3に対して日本は5.5ポイントという結果でした。10年後も日本の重要度は中国よりも上と回答した会社も26社中5社ありましたが、10年後には中国が戦略的重要度で日本を追い越すことが示されました。現在の日本市場の強みに関する調査結果からは、日本は依然大きな市場ではあるものの、高い成長率は望めず、製品導入に関する障壁は高いと認識されていることがわかりました。また中国については既に十分な大きさの市場であり、成長率の高さなどが魅力として映っている一方で、政府の動きが重要なリスクや不確実性として映っています。日本の患者さんが今後も先進医療技術の恩恵に浴し続けるためには、これらの日本の強みを維持・強化していくとともに、様々な改善が必要と考えられます。

本調査をとりまとめたAMDD保険委員会委員長の加藤幸輔(エドワーズライフサイエンス株式会社執行役員)は調査結果を受けて、「医療機器において今日日本はアジアにおいて中国とその重要度を分け合っています。しかしながら、製品の供給状況をいろいろな観点から分析すると中国や韓国のほうがより先進的な医療機器が患者さんに提供される市場になりつつあることがわかります。この傾向は日本の患者さんにとって懸案事項ですし、AMDD企業が日本はビジネスを行うには比較的厳しい市場であると見ているという兆候でもあります。」と述べています。また、AMDD会長のデイビッド W. パウエル(ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社代表取締役社長)は「もしこの傾向が続けば、10年後日本はアジアにおける医療機器および体外診断用医薬品市場でトップの座を中国に明け渡しているかもしれません。平成20年から開始された「医療機器の審査迅速化アクションプログラム」等の政府の5ヶ年計画など初期の取り組みは始まっていますが、医療機器メーカーによる先進医療技術の研究開発への投資にインセンティブを付加するなど更なる取り組みが必要です。医療機器業界が迅速にまた安定的に世界最新の医療技術を日本の患者さんのニーズに応える形で導入し続けることができるようにするためには、日本の医療機器および体外診断用医薬品業界が魅力的な市場であり続けることが不可欠です。」と述べています。

AMDDは、デバイスラグ、デバイスギャップの解消と国内の医療機器産業の活性化を実現するため、これまでも提言を続けてきた「高い参入コストの是正と承認までのラグの縮小」「保険償還価格決定メカニズムの改善」、特に「日本市場の流通コスト高を考慮せずに、また為替レートの変動のみによっても機械的に価格が下げられる再算定制度(外国平均価格制度)の廃止」を各方面にお願いし、実現にむけて協力していくことで患者さんへの先進的な医療技術の提供を実現し続けたいと願っています。

以上

※ 本調査結果の詳細は「提言書など」よりご覧いただけます。

ニュースルーム一覧に戻る
pagetop