「医療機器・体外診断用医薬品に係る薬事法の改正を提言」
2011年10月27日
- キーワード
日本の患者さんにより迅速に先進医療技術をもたらすために
米国医療機器・IVD工業会(AMDD)(所在地:東京都新宿区、会長:デイビッド W. パウエル)は、このほど、世界最新の先進医療機器と体外診断用医薬品を日本の患者さんにより迅速に届けるために、医療機器および体外診断用医薬品にかかる薬事法改正に向けた2つの提言書を発表しました。これらの提言により、日本の薬事規制の構造はより国際的なガイドラインと適合したものになり、また医療機器および体外診断用医薬品が医薬品とは異なるものとして管理される方法が明確になります。
またAMDDは先頃、他の医療機器団体と共同でこれらの提言書を厚生労働省に提出いたしました。AMDDではこれらの提言が、現在政府によって2012年の国会への提出準備がなされている薬事法の改正案に取り入れられることを希望しています。AMDDはこの2つの提言書の内容を遂行することで、日本での医療機器や体外診断用医薬品が欧米よりも数年遅れて承認されているという「デバイスラグ」を解決することができると確信しています。
なお、医療機器の薬事法改正に関する提言書「日本における医療機器規制の問題点とその解決に向けて」は欧州ビジネス協会(EBC)医療機器委員会と共同で提出され、体外診断用医薬品の薬事法改正に関する提言書「体外診断用医薬品の薬事法改正に係る要望」は、社団法人日本臨床検査薬協会(JACRI)、EBC臨床検査機器・試薬(体外診断)委員会と共同で提出されました。
医療機器に関する薬事法改正への主な提言内容は以下の通りです。
医療機器の特性に鑑み、各条文の記載内容を「医薬品、医薬部外品及び化粧品」と「医療機器」に分割する
薬事法の歴史の中に医療機器が追加されて以来、医療機器の取り扱いは常に「医薬品等」として準用されてきました。しかし、準用は読みにくいばかりでなく、そもそも、設計開発手法や品質管理手法の全く異なる2つの製品群を同一条文を準用する法運用で規制することによる弊害が、デバイスラグやデバイスギャップ、患者さんの先進医療機器へのアクセス阻害の原因となっていると分析し、法律をより理解されやすく、合理的な運用を実現するために、薬事法の記載内容を「医薬品、医薬部外品及び化粧品」と「医療機器」に別章立てにして記載することを提案します。
医療機器の改善改良を促進させるため、ISO13485 を国際整合された運用で適用する
平成17年度の薬事法改正において、医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理基準に関する省令(Quality Management System: QMS省令)が導入されました。しかし、QMS省令は品質管理システムの国際標準規格であるISO13485 をそのまま導入したものではなく、日本独特の細分化された業態(製造所の住所単位)でISO13485 を適用させたために、極めて不安定なシステムとなっています。
医療機器の品質、性能及び安全性を担保するためにも、ISO13485 を、医療機器の市場導入のための評価プロセス及び品質管理システムとして、他の導入国と齟齬のない正確な解釈に基づき導入することが必要です。これを実現することにより、医療機器に必須の継続的な改善改良をタイムリーに市場の製品に反映することが可能となり、デバイスラグ、デバイスギャップの解消はもとより、その根底にある思想を理解することにより、リーストバーデンサムアプローチ(審査側・申請者側双方の最少負荷による市販前評価)の実践から、現在の長期化している医療機器の承認審査期間に対する抜本的な解決法となることを確信しています。
体外診断用医薬品に関する薬事法改正への主な提言内容は以下の通りです(薬事法条文の改正が必要なものと政省令通知の改正に留まるものに分けて記載しています)。
Ⅰ.薬事法改正
法13条関連:製造業許可制度の見直し
国内製造業者許可については、別途製造所のQMS適合性を確認することとし、現在の許可制度から登録制度への移行を要望します。
現行の国内の製造業者許可制度においては、企業合併等により法人格が変更になった場合や製造所を移転した場合等、新たに許可取得の手続が必要になることにより、製品の安定供給に支障をきたす恐れがあります。また、製造所の許可要件である構造設備については、別途製造所に対するQMS適合性調査の中で確認されているため、重複した調査が行われている現状の解決が必要です。
法13条の3関連:外国製造業者認定制度の見直し
外国製造業者認定についても、国内製造業者許可と同様、別途製造所のQMS適合性を確認することとし、外国製造業者認定制度から登録制度への移行を要望いたします。
外国の製造業者においても、国内製造業者と同様に新たに認定取得の手続が必要になることで、製品の安定供給に支障をきたす恐れがあります。さらに、外国製造業者の認定手続きには多くの時間がかかるだけでなく、ほとんどの場合が国内の代理人による手続きのため、重複認定の恐れが多い等の問題があります。
Ⅱ.政省令(通知)改正
法第52条及び規則第215条関連:一般的名称表示除外による混乱回避および誤使用防止
現在、体外診断用医薬品における一般的名称はクラス分類の目的にのみ使用されているといっても過言ではなく、詳細なクラス分類を行なうため、一般的名称もかなり細分化されています。このため、同一の検査項目であっても類似の一般的名称が存在し、使用者にとってそれを区別することは困難な状況で、使用者の混乱を招いていると思われます。そのため、体外診断用医薬品に関しては一般的名称の表示を不要とすることを要望いたします。
例:検査項目がグルコースである一般的名称
・グルコースキット
・血液検査用グルコースキット
・尿検査用グルコースキット
・血液・尿検査用グルコースキット
・自己検査用グルコースキット
・一般用グルコースキット
AMDDは、医療機器および体外診断用医薬品の品質、性能及び安全性の担保を図りつつ、デバイスラグを解消し、より良い製品を迅速に患者様に届けることを目指し、改善改良の阻害要因を取り除くための改善策について、引き続き提言を行っていきたいと考えております。
以上
※本提言書の詳細は「提言書など」よりご覧いただけます。