医療関連感染と医療従事者の安全について提言
2013年6月10日
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-感染予防対策の強化と医療従事者の安全強化は質の高い医療の提供に不可欠-
良好な効果の創出につながる政策の事例
米国医療機器・IVD 工業会(AMDD)(所在地:東京都新宿区、会長:島田隆)は、本日6月10日、感染予防対策の強化の必要性と医療従事者の安全強化の急務について、「AMDD 医療関連感染(healthcare-associated infections:以下、HAI)の安全政策に関する提言」(2013 年版)を発表しました。 本提言は2010 年に発表した「感染予防による医療安全に向けての提案」の改定版です。
2010 年版の提言を経て、2012 年の診療報酬改訂では、大病院における感染防止および感染制御に加算が付き、定例会議の開催等が要件として含まれました。しかしHAI の実態の確認や感染予防策の実施などの具体的な活動内容は含まれておりません。そのため、AMDD では、根拠に基づいたグローバルなベストプラクティスに従い、2013 年度版として本提言を発表いたします。
患者と医療従事者の安全強化のための政策が必要
HAI とは、院内感染など医療現場で患者さんが感染することを意味します。感染対策の基本方針として、患者と医療従事者に対するより一層の安全強化と、医療関連感染の予防を目的とした政策が、特に重要な事項となっています。医療機関における多剤耐性菌の発生は、回避しがたいことのように考えられていますが、有効な感染予防措置を実施することで、多剤耐性菌の蔓延を抑制できることが実証されています。医療機関における多剤耐性菌感染は、感染予防措置、例えば、手指衛生、針刺し防止機構付き器材や感染防止器材の使用、隔離措置、施設環境の衛生管理、アクティブサーベイランス(積極的な保菌状況監視)などを行って、多剤耐性菌を除菌することで、感染を減少することができます。
医療費の抑制のためには感染対策の包括的ガイドラインの実施と感染管理の強化の法制化が課題
1990 年代半ば以降、先進諸国における医療保健政策は、早期治療と予防を主眼とするものへと移行してきました。このパラダイム変化のもと、各国の医療政策の中にあって、感染対策は共通する大きな課題として位置づけられています。
世界保健機関(WHO)は、2005 年に開催した「世界の患者安全への挑戦(Global Patient Safety Challenge)」において、医療関連感染を死亡の主要原因の一つとして特定していますが、同時に予防が可能である、としています。この回避可能な医療関連感染に要する医療費は膨大なものとなっています。感染対策の包括的ガイドラインの実施と、感染管理の強化を法制化することによって、大幅に削減できるものと考えます。
さらに、予測可能な事故や損傷と予防可能な感染リスクの低減を目指し、患者や医療従事者の安全強化のための、ガイドラインや関連法規を整備することで、医療の質の向上とともに、回避可能な事故や損傷の軽減、医療費の効率化という成果も得られるものと考えます。
AMDD は、患者や医療従事者の安全を確保するため、医療現場における安全および感染対策強化の実施に向けて、引き続き具体的な提言を行ってまいります。