一般社団法人 米国医療機器・IVD工業会

AMDD logo

一般社団法人
米国医療機器・IVD工業会

プレスリリース

先進的な医療機器へのアクセス確保と保険医療財政の健全化に向けての提言 -バリューベース・ヘルスケアに立脚した医療材料償還制度の構築に向けて-

2017年2月1日

キーワード

米国医療機器・IVD工業会(AMDD)

一般社団法人米国医療機器・IVD工業会(AMDD)(所在地:東京都中野区、会長:加藤幸輔)は、本日、「イノベーションの振興と患者の医療アクセスの確保」及び「医療・介護財政の健全化」を図るため、イノベーションの価値(バリュー)を測り価格に反映する償還価格制度、また、バリューの高い医療機器やイノベーションに重点的に資源が投入される仕組みを構築するための提言を発表しました。

イノベーションの価値(バリュー)を測り、償還価格への反映を

私たちAMDDは、医療機器を単なるコストとみるのでなく、そのイノベーションを活用することで、患者さんの医療へのアクセスをできるだけ維持しながら、医療の効率化を進めることを目指すべきだと考えています。そのためには、イノベーションの価値(バリュー)をきちんと測り価格に反映する償還価格制度、また、バリューの高い医療機器やイノベーションにより重点的に資源が投入される仕組みが必要です。こうした考え方は世界の潮流に沿っており、バリューの高いイノベーションを奨励することで、世界で勝負できる医療機器が日本で生まれる環境につながるものと考えます。
その前提として、医療機器のイノベーションには医薬品と異なる特性があることを踏まえ、それに適ったバリュー評価の仕組みを設計することが必要です。こうした認識に基づき、健全な医療保険制度の維持とイノベーション振興の継続の両立の観点から、今後は医療機器のバリューに応じて評価を進め、限られた予算の中での資源配分を行うべく、AMDDでは以下を提言します。これが関係各位との議論の契機となることを強く望みます。

提言:新規性が高く、医療・介護のアウトカム向上が期待される医療機器を、
より高く評価する「バリューベース償還制度」の導入

「イノベーションの振興と患者の医療アクセスの確保」及び「医療・介護財政の健全化」をはかるために、以下のようなことを検討・推進すべきと考える。

  • 医療・介護の観点から経済性について評価する場合、価格引き下げのみならず、経済性が優れた製品については、より高い償還価格を付与する。

  • 市販前に臨床データが十分なくとも、臨床上の価値が高いと見込まれる製品については、バリューに見合った評価を行う。

  • さらに、償還制度の簡素化、償還価格の引き下げを行う場合でも、イノベーションの度合いを勘案する。

これらを可能にする償還制度のイメージは下記の通りである。

バリューベース償還制度は、社会に対し次のような恩恵をもたらすものと考えている。

  • 医療機器によりもたらされる患者の臨床上並びに経済上のバリュー/アウトカム(患者家族の介護負担軽減も含む)が向上する。

  • 早期離床、早期退院、さらに介護負担の軽減により、国民の健康的な社会参画に寄与する。

  • イノベーションの振興を国内外にもたらし、医療機器産業が経済成長の牽引役を果たす。

※限られた資源の中で、イノベーションを推進し、医療・介護のアウトカム(効果)を最大化するためにバリュー(価値)の観点で医療を評価する考え方

日本の医療と介護に貢献する医療機器

医療機器を開発、販売するメーカーとして、AMDDは私たちの製品が医療現場で医師によって活かされ、結果、多くの患者さんの生命が救われ、健康な生活を取り戻していることに大きな誇りと喜びをもって日々業務に励んでいます。しかし、近年のまれにみる高齢化の進展によって日本の医療財政の健全性は危機にさらされてきており、新たな発想のもとでの抜本的な対応が必要となっています。
日本の医療機器市場は約2.7兆円、国民医療費全体の約7%を占めるに過ぎませんが、イノベーションにより生み出される先進的な医療技術は、命を救い、失った機能を代行し、治療後のQOLを向上させます。医療機器のイノベーションはたゆまなく進歩し、それによって国が主導する健康寿命の延伸、生産性の向上、介護離職の削減に寄与します。2014年に米国で発表されたMilkenレポートは、医療機器の間接費用として患者本人の生産性損失、さらには介護者のコストや生産性損失にも目を向け、それらを数値化することで、単に医療機器本体の価格のみを議論するのではなく、係る費用を社会的立場からも広範かつ総合的に評価すべきと指摘しています。日本でも今後、同様の分析を行うことが必要であると考えます。医療機器のイノベーションを、効率的な医療の実現に向けて誘導することで、日本の医療と経済に対する貢献をさらに拡大することが可能となります。

転換期にきている医療機器の価格抑制策

対GDP比の医療費は大きく上昇しており、従来施策の延長線上での医療費抑制の取り組みが限界にきていることは明らかです。これまで医療財政の健全化のために様々な対策が立てられてきており、医療機器についても外国参照価格制度等の施策によって単価引き下げも行われてきましたが、さらなる単価の引き下げによってイノベーションへの投資を困難にしたり、普及に慎重になるあまり適応や施設基準を過度に制限することによって患者の医療アクセスを制限したりすることは、今後の持続可能な日本の医療制度・財政を考える上で得策ではないと私たちAMDDは考えます。

バリューベース・ヘルスケアに立脚した医療材料償還制度の具体的イメージ

1. イノベーションの振興と患者の医療アクセスの確保
  • 患者にもたらされる臨床上の効果、並びに介護する家族の恩恵を主眼にした医療機器の「バリュー(価値)」の評価が必要である。バリューは発明・改良といったイノベーションに拠るところが大きく、イノベーションの適正かつ迅速な評価が、医療現場への速やかな導入及び安定した医療アクセス(治療を受ける機会)の確保につながる。
  • 医療機器は物理的に治療効果が持続することが知られており、人工関節、ペースメーカー、眼内レンズ等は長期にわたり患者のADL(Activities of Daily Living)を確保する典型である。
    昨今では予防・診断の観点から心機能をモニタし、脳梗塞を誘発するような血栓の形成を示唆し、適正な薬剤治療の導入を助けるものもある。治療、予防並びに診断のいずれの場合にあっても、患者のADL確保と、将来予測される介護の労力、並びに金銭的負担の回避に寄与している。
1.1. 広範な経済性評価による加算制度の導入(①)

現行の有効性並びに安全性評価に加え、経済的手法による医療並びに介護資源の効率化の視点からも評価する制度を提案する。

  • 現在、画期性加算・有用性加算は、「新規の機序」「有効性・安全性」「治療方法の改善」の3点から評価されているが、バリューに立脚した「経済性」を新たな補正加算要件として追加することを提案する。
  • 「経済性」の評価にあたっては、公的な医療に留まらず介護費や介護者の負担軽減等の広範な費用を含めた分析とする。
  • イノベーションに対する経済性評価を行った場合は、本邦における医療環境に基づいて価格が決定されるため、外国価格再算定制度の対象から免除する。
1.2. 新規性先行評価制度の創設(②)

イノベーションの振興を速やかに実現するために、上市後一定期間内での評価(有効性、安全性または経済性)を前提として、上市時に評価を先行して認める「新規性先行評価制度」の創設を提案する。

  • 医療機器は、承認取得時に必ずしも国内治験データが存在せず、また、長期間にわたる効果の評価には時間を要する場合が少なくない。イノベーションを評価し先進的な医療機器へのアクセスを確保するため、承認時点での蓋然的な有効性、安全性または経済性を、先行的に評価して価格設定をすることは妥当であると考える。
  • 新規性先行評価を得た場合には、公的データベース等を用いた市販後の臨床研究計画に従い、上市後一定期間後での再度の評価を受けることを前提とする。
  • 「新規性先行評価制度」により評価を得ていたが臨床研究の結果、当初予測された有効性、安全性または経済性が示されなかった場合には、先行評価相当分を減算する場合もある。
  • 新規性先行評価時に経済性評価を行った場合は、本邦における医療環境に基づいて価格が決定されるため、外国価格再算定制度の対象から免除する。
1.3. 上市後C1・C2再申請制度の創設(③)

既存の機能区分にて特定保険医療材料として収載された医療機器について、市販後に得られた新たな臨床上、もしくは経済性等の知見に基づき収載後一定期間を経た後に、改めて機能区分の該当性について評価する「上市後C1・C2再申請制度」の創設を提案する。

  • 市販後に集積された調査成績等により、保険収載時には評価されなかった知見(有効性、安全性または経済性)が得られた際に企業が改めて再評価の申請を提出できる機会を設ける。
  • 上市後C1・C2再申請時に経済性評価を行った場合は、本邦における医療環境に基づいて価格が決定されるため、外国価格再算定制度の対象から免除する。
2. 医療機器・材料償還制度による医療・介護財政の健全化

医療並びに介護財政の健全化には、医療機器のイノベーションによる経済性向上に加え、診療報酬制度の既収載品への効率的な運用により歳出削減を推進し、イノベーション振興への再投資が重要である。

2.1. 技術料包括対象医療機器の範囲拡大(④)

比較的少額で、使用本数・量が平準化されている医療機器・材料については、診療報酬制度の簡素化の観点から、技術料への包括化について検討することを提案する。

  • この場合、初回の包括点数は、特定保険医療材料償還価格と該当する技術料の和とする。
  • 包括化にあたっては、学(学会)・官・産による議論が必要である
2.2. 再算定制度の見直し(⑤)

諸外国との制度や仕組みの差異が勘案されていない再算定制度については反対の立場であるが、現行の再算定制度の運用にあたっては機能区分によって異なる係数を用いるなど、メリハリのある運用を提案する。

  • 特定保険医療材料として区分が新設された場合にあっては、初回の審査時に外国価格調整がなされているため、新設後複数回の価格改定期間においては、外国価格再算定を免除する。
  • 「医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会」で医療ニーズが高いと認められた機能区分等の取扱いの考え方と同様に、イノベーションにより新たな医療機器が導入され続けている機能区分については、外国価格に対する倍率上限の引き上げを行う。
    他方、機能区分が設置されてから相当の期間が経過し、かつ、一定期間、新たな製品が追加されていない区分については、計算することが可能な全ての参照国の平均価格を使用することを前提に、外国価格に対する倍率上限の引下げを行う(但し、市場が極めて限定的である等の理由で新規の製品開発が進まない区分については、安定供給への配慮が必要である)。
ニュースルーム一覧に戻る
pagetop