一般社団法人 米国医療機器・IVD工業会

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コラム

優れたデザインの安全器材 ─患者のみならず医療従事者の安心のために─

2019年2月2日

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院内感染という言葉が頻繁に聞かれる今日、医療の安全性に対して、社会的にも強い関心が向けられています。院内感染は患者が治療を受けている病院で新たにMRSA(黄色ブドウ球菌)や緑濃菌、結核などに感染するケースと、医療従事者の職務上の感染(職業感染)のケースとがあり、職業感染には、HBV(B型肝炎)、HCV(C型肝炎)、HIV(ヒト免疫不全ウィルス)などの生死に関る危険性のある感染症があります。安全であるべき病院が病原体への感染の温床となっているのは、看過できない問題といえます。

職業感染の現状

職業感染の原因は採血、注射,点滴時などに、医師、看護師、臨床検査技師らが、患者の血液や体液のついた針によって刺傷する針刺し事故がもっとも多く、鋭利器材を使用する医療スタッフは毎日、針刺し事故の危険性に曝されているのが現状です。(1回の針刺し事故で感染するリスクは、HIV0.3%、HCV1.8%、HBV6~30%)。全国エイズ拠点病院では、3年間に11,798件の針刺し事故が報告され、事故報告率は22%以下と推定され(1992年発表の誤刺に関するアンケート調査結果によると、6ヶ月で3人に1人が事故を経験しているが報告していない)、日本での職業感染防止に対する安全意識の低さを物語っています。

針刺し事故の発生段階をみると、各器材によって,使用中・抜針時、リキャップ(使い終わった針をキャップに戻す)時、使用後廃棄までの間に多発しており、その2大要因として各器材の構造の特性、事故を誘発しやすい器材の取り扱い方法が上げられます。

日本での針刺し事故は、医療従事者個人の技術の低さや不注意からくるものとして片づけられがちでしたが、煩雑な医療現場での事故防止を徹底するためには、安全性を工学的に追求した器材を導入するなどの、実践的な感染予防対策を講じる必要があります。

針刺し事故の防御対策

針刺し事故の防御対策のひとつとして、すでに安全機構のついたさまざまな針器材の開発が進んでいます。ボールペンのようにワンタッチで内針を引き込むことができる静脈留置カテーテル、シールドカバー付き採血針、セーフティロック付き翼状針、使用後針が自動格納する微量採血針や新生児用ランセットなどの改良により、抜針直後から廃棄に至るまでの段階で針やランセットに直接触れることなく処理することができます。また、金属針と三方活栓(点滴の本管と支管をつなぐ分岐点の栓)を使用しない閉鎖式輸液システムの開発など、患者と医療従事者双方のために「針なしシステム」や「安全機構のついた鋭利器材」へ転換するという器材自体のハード面での改良は、煩雑な医療現場においても医療従事者の事故を回避し、医療行為そのものに落ち着いて専心することを可能にしたといえます。【事故防御装置の付いた鋭利器材に全面的に切り換えた名古屋のある病院では、針刺し事故によるHCV汚染針事故が、導入前の23件(1993年度)から1件(1999年度)にまで減少、著しい成果を見せています。】

事故防止で経費削減

今日、アメリカでは針刺し事故防止法(2000年)が連邦法として制定されるに至り、着実に安全器材の普及が進んでいますが、日本の安全器材の普及率は器材によって異なり、高いものでも5%程度です。すなわち、医療従事者及び患者の安全を確保できない医療機関がまだ大半を占めていることになります。
安全器材に転換した場合、器材の購入、事故予防対策費などのコストに対して、予防可能であったと推測される事故に関連して発生した費用(受傷者の追跡調査費、感染者の治療費など)を比較すると、22ヶ月間で506万円の経費削減が可能との報告もなされており、病院全体としての経費削減が可能との計算結果が得られています。

より高度な医療の実現へ

医療従事者の安全性に目を向け、衛生面での意識を高めることは、より高度な医療を行うことにつながるものです。患者、医療従事者双方の生活の質(QOL)向上のためにも、職業感染の実態の正確な把握と、適切な予防対策を導き出すサーベイランス体制の確立をはかり、安全器材の導入、事故防止のシステムの一刻も早い普及が求められています。

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