近年話題の画像診断技術 ─体内の鮮明なイメージで患者も納得の診断と治療─
2019年2月2日
画像診断は人体の内部を鮮明に画像化することで、病気の診断や治療に必要な情報をヴィジュアルに読み取れる高度な医療技術です。人間ドックや脳ドックなどの検診にも不可欠であり、また、日本人の死因の第一位であるがんや、脳梗塞、動脈瘤などの循環器病をはじめ、さまざまな疾病の早期発見・治療に威力を発揮しています。画像診断は、患者にとっての肉体的苦痛なしに簡単に受診できる上、脳や内臓の輪切り画像や背骨の立体的イメージなどにより体内の情報が視覚的に明かになることから、患者自身が病状を理解し納得して治療に臨むことができるという大きな利点があります。また、早期発見を実現することで、全体的な治療コストの引き下げにも貢献しています。
最近話題のCT、MRI
CT(コンピュータ断層撮影装置)は、X線を利用して、人体を薄い輪切りの状態で見ることができる装置です。切開することなく、骨や各種臓器、がん組織など人体の内部構造を明瞭に画像化できます。一方MRI(磁気共鳴画像診断法)は、人体の水素原子の磁気共鳴現象により体の断面を映し出す検査法で、体内の出血やがんの発見、体の縦断面の撮影が可能です。CTとの違いとしては、MRIでは体内の柔らかい組織の識別ができ、また、体内での血液の流れも良く観察できます。CTやMRIは、医師が診察室で手軽に使う超音波診断(人体に無害なので、胎児の様子を安全に観察できることでも知られています)より細かい診断が必要な際に、主に用いられます。
心臓のCT検査、高速撮影で画質向上
これまで心臓血管病診断には、脚や腕からカテーテルという管を挿入して行う「心臓カテーテル検査」が普及していますが、最近ではCTを使用して同様な情報を得られるようになってきています。「心臓CT検査」は、カテーテル挿入も、長時間の安静状態保持も必要なく、患者さんにかかる体の負担がかなり軽くなります。
CT検査は胴体や脳の輪切り像でおなじみですが、より速く、より広い範囲を高精彩に撮影することが可能な「マルチディテクターCT」の登場により、心臓もCTで撮影できる時代になりました。また最近では、1回転の撮影で64枚の輪切り画像を撮影できる「64列マルチディテクターCT」も登場し、拍動を続ける心臓をブレることなく撮影することも可能になり、10秒以内で心臓全体を撮影することができるため、「心臓カテーテル検査」とほぼ同様の診断結果を苦痛なく得られるようになりました。
しかも単なる輪切り像ではなく、画像処理により心臓や冠動脈、またはその周辺の血管などを立体的にとらえられ、狭心症や心筋梗塞の原因となる冠動脈の異常個所を浮き彫りにすることが可能です。息を止めている時間も20秒以下で、検査は15分ほどですむのです。造影剤も腕の静脈から少量入れるだけなので、カテーテルを使う検査に比べて安全性もぐんと高まりました。
診断だけでなく治療にも
画像診断技術は正確な診断だけでなく、臨床現場で低侵襲の治療にも役立っています。例えばCTにより病変部の位置を正確に把握した後、モニター画面を見ながら肝臓につながる血管の立体的構造を確認し、病巣に直接抗がん剤を送りこむ治療が可能です。このように、人体にメスをいれずに治療するという患者の生活の質(QOL)を最大限に考慮する最新の医療では、画像診断技術が必要不可欠となっています。
今後は、心臓の動きまで観察できる四次元CTなどの開発が進む一方で、デジタル化対応の進展によりMRIやCT画像を通信回線で専門の施設に送信して診断する「遠隔診断」も普及すると考えられます。画像診断の需要が増し、検診の段階から質の高い医療を提供することで、さらに治療コストの削減や、患者のQOLの向上にも寄与することが期待されています。
がんと画像診断
最近、がんの早期発見で注目されている画像診断にはPET(陽電子放射断層撮影法)や、従来のCTがさらに進化した「マルチディテクターCT」などもあります。これらの診断技術を疾病や部位によって使い分けることで、ミリ単位の腫瘍の発見や、細かい病変の把握が可能になるのです。
日本では年間約30万人(2,000年調べ)が、がんで死亡しています。その中で女性の乳がんは罹患率が胃がんを抜いて一位、死亡率も年々上昇し続けています。乳がんは早期発見が確実に救命につながるため定期検診の重要性が増しており、視触診では発見できない無症状のケースの診断にも優れているマンモグラフィー(乳房専門のX線画像診断)への需要が高まっています。このシステムなら、初期の乳がんの石灰化や腫瘤の非常に淡い濃淡も見分けることができます。もちろん、この画像クオリティの高さを有効に役立てるためには、検査を担当する専門撮影技師、読影医の高い技術、精度の高いシステム(マンモグラフィ専用X線装置、マンモグラフィ専用フィルムスクリーンシステム)が必要です。