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コラム

救急医療の現場で心肺機能をモニター ―注目される「低侵襲」の2機器―

2019年2月2日

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重い病気や大きななどで生命に危険が急迫しているとき、または難しい手術を受けているときは、特に慎重な治療や看護が求められます。救命救急室や手術室、集中治療室でこのような治療を受けるとき、全身状態を監視・管理するために患者さんは数々の医療機器に取り囲まれることになります。

重症な症例の場合、最も注意を必要とするのが心臓と呼吸の機能です。体を構成するすべての細胞は酸素を使って動いていますが、体には酸素を蓄える機能がないので、呼吸を通して肺で酸素を血液中に取り込み、心臓の働きによって全身にくまなく酸素を送り届けています。全身の細胞すべてに酸素が届いているかどうかを監視し続ける医療機器として、いま「血行動態」や「血液の酸素飽和度」を克明に追跡するモニタリング機器が注目されています。米国で新しく開発されたものは、患者さんの体に大きな負担をかけない「低侵襲」であることが特徴です。

血圧測定のために動脈に留置されているカテーテルで血行動態を把握

「低侵襲」なモニタリング機器の一つに、血行動態をモニターする動脈圧心拍出量測定システムがあります。血行動態とは、心臓の動き方、心臓が送り出す血液の量とその流れ方のことで、容態とともに変化していきます。このシステムでは特に、1分間に心臓から全身に送り出される血液の量(心拍出量)を測定します。

これまで連続的に心拍出量を測定するには首や太ももの付け根にある静脈から心臓の中まで細いチューブ(カテーテル)を挿入する方法が主流でした。しかし、動脈圧心拍出量測定システムの場合は、採血や動脈圧測定のためにあらかじめ手首の動脈に設けられる「動脈カテーテル」という細いチューブに接続するだけで血圧を波形としてキャッチし、この波形を解析することで心拍出量を連続的に測定することができます。

カテーテルを心臓の中まで挿入するというこれまでのような方法に比べ、患者さんの負担を少なくしながら心拍出量を測定できるため、多くの患者さんの心拍出量のモニタリングとして選択し、使用することができます。

動脈圧心拍出量測定システムはセンサー(検知器)と測定装置として働くモニター(重さ約2kg)を組み合わせて使います。このモニターでは心拍出量だけでなく「一回拍出量(SV:心臓が一回の拍動で送り出す血液量)」や「一回拍出量変化量(SVV:一回拍出量の周期的変化)」など、心臓の動きを見るための様々な指標も患者さんに大きな負担をかけることなく測定することができます。また使用準備も簡単で、緊急を要する症例でも速やかに測定が開始できます。

酸素飽和度を測定して早期回復に貢献

さて、もう一つのモニタリング機器は、全身を巡って心臓に戻る静脈血に残った酸素の割合をモニタリングできる「オキシメトリーカテーテル」です。

救命救急室や集中治療室で治療を受ける重症な患者さんの「静脈血酸素飽和度(酸素の割合)」を連続的に測定できる初めてのカテーテルです。 このカテーテルは医療現場で数多く使用されている中心静脈カテーテル(心臓の最も近くの静脈に留置するカテーテルで、薬剤の投与や中心静脈の圧を測定するために使用)に血液の酸素飽和度を測定する機能が加わったものです。このカテーテルを専用のモニターと接続し、心臓に戻る静脈血の酸素の割合を見ることで、全身に十分酸素が循環したかどうかを連続的に確認することができます。

これらのモニターで測定された数値は、投与する輸液や薬剤の量やタイミングを調節する目安になり、救命救急室や集中治療室に多い重症な患者さんの容態を安定させるために役立っています。また、このオキシメトリーカテーテルはチューブの中が3分割されており、酸素飽和度を測定しながらでも静脈の圧力の測定や輸液を並行して行うことができます。米国集中治療医学会は「中心静脈血酸素飽和度を一定に保つことにより、患者さんの死亡率が低下し、入院日数も短縮される」とその有用性を認め、使用を推奨しています。

体への負担が少ない動脈圧心拍出量測定システムを用いて心臓が送り出す血液を測定し、オキシメトリーカテーテルを用いて十分な酸素が全身の隅々に届いたかを静脈血に残った酸素の割合から捉えることで、重症な患者さんの呼吸と心臓の機能を同時に監視することができます。これにより、一刻を争う患者さんの状態の変化をできるだけ早く捉え、重要な治療の効果を確認することにつながるのです。

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