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コラム

人工股関節 ─長年の痛みを解消する先進医療─

2019年1月28日

キーワード

40~50代以降の女性に多くみられる変形性股関節症や慢性関節リウマチに悩む人に人工関節置換術という治療法があります。いずれも直接死に結びつく病ではないにしても、長年その痛みに耐えざるをえない人は、国内で約200万人いるといわれます。

加齢とともに進行する股関節の症状は、軟骨の磨耗や骨の変形により関節が破壊されるもので、運動機能が失われ、歩行困難となり、日常生活に支障をきたすことがありますが、近年一段と改良が進んでいるのが人工股関節とその技術を用いた治療法です。

人工股関節とは

人工股関節は、骨盤側のソケット部分(臼蓋)と、大腿骨の上端にあるボール部分(骨頭)が噛みあわさって滑らかに動くように形成されており、金属や高分子量ポリエチレン、あるいはセラミックなど、耐久性のある高度な素材の組み合わせが追究されたものです。

現在、日本では、人工股関節手術は年間約6万5,000件(人工骨頭含む)行なわれています。傷んだ股関節を取り除いて人工股関節に置き換えることで、普段立つことのできない人も関節の機能を取り戻し、長年の痛みが解消されて歩行できるようになるなど、目に見えて患者の生活の質(QOL)向上に貢献しています。

入院期間の短縮に貢献

人工股関節は長期間の使用への対応が重要です。

技術面での最大ポイントは、人工股関節を大腿骨のより正確な位置に埋め込むことにあります。大腿骨側の髄腔(ずいくう)と人工股関節のステムの形状とが一致しない場合、緩みや隙間が生じて摩擦に耐えられず、体重を支えきれなくなり、再手術を余儀なくされるケースも出てきます。そのため、医師には高度な技術と経験が要求されてきました。

そこでいま最も注目を集めているのが、手術支援ロボットの存在です。コンピュータ制御のハイテクロボットが医師の助手役となり、CT(コンピュータ断層撮影装置)で撮影した大腿骨の形状データをもとに、アーム先端のドリルによって正確に掘削し、より精度の高い手術が可能になりました。その結果、人工股関節と骨が隙間なく密着し、早期に結合するため、人工股関節の良好な長期成績につながっていくことになります。

高齢社会日本での期待も大きく

股関節や膝関節の障害は、高齢社会とともに増加し、多くの人が不安に思っているのが実状です。高齢者にとっての長期入院は身体的にも精神的にもダメージが大きく、上記のようなロボット支援による医療技術の向上は、多くの高齢者にとって、前向きに生活するための強力な解決策となります。また、患者ひとりひとりの入院日数を削減し、寝たきりのお年寄りの数を減らすことにもつながることから、こうした先進医療技術は医療費・介護費の削減にも大きな役割を果たしているのです。

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