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医療従事者

単回使用医療機器(SUD)の臨床現場における問題意識とSUD再製造の役割

2020年2月1日

キーワード

高階 雅紀 氏
大阪大学医学部附属病院 病院教授、同院材料部 部長、サプライセンター長、臨床工学部 部長、手術部 副部長

 
単回使用医療機器のこれまでの取り扱い

医療機器には単回使用医療機器、再使用可能医療機器、再製造単回使用医療機器の3種がありますが、私は医療者として、単回使用医療機器の役割や問題意識を広く認知してもらいたいと思っています。

2014年に厚生労働省から単回使用医療機器(以下SUD)の取り扱いにおいて、再使用禁止の徹底の通知が出ました。病院では安全が保証されていないので、使用してはならないというものです。それまでは再使用可能な医療機器やSUDの一部を病院内で洗浄減菌の上、再使用していました。それに対して特段の合理的理由がない限り再使用してはならないという指導が入ったのです。特段の理由というのは、感染対策委員会や医療機器安全管理委員会での検討、医療安全管理委員会での承認などの諸条件をクリアすることです。クリアすれば使用できるという解釈も成り立ちますが、個々の病院にとってはハードルが高く、実質禁止に変わりない通知でした。

再製造単回使用医療機器の導入

2017年7月、厚生労働省は単回使用医療機器の再製造に関する新たな制度を創設しました。医療機器製造業者が使用済みのSUDを自らの責任で収集し、分解・洗浄・減菌などの処理を行い、再使用できるような新たな仕組みが設けられました。再生されたSUDは再製造単回使用医療機器(R-SUD)として、使用できるようになったのです。

R-SUDはオリジナルのSUDとは別の製品として認可登録され、安全対策や回収などはすべて再製造販売業者の責任で行うことになります。製造承認されれば安全性が認められたことになります。

使用済み医療機器は専用の密閉容器に入れ、再製造販売業者に引き取られるのですが、再製造の工程では、減菌に関する専門的知識を有する者、たとえば(一社)日本医療機器学会の第1種減菌技師の認定を受けている者等を置かなければならないとされています。再製造品には、新しいシリアル番号が付与され、トレーサビリティを把握し、再製造の回数を決めるなど厳正なチェックのもと、再販売されます。病院内ではここまでできないので、業者の参入が必要です。

R-SUDの意義

R-SUDの新制度が創設されたことは、どのような意義があるのでしょうか。行政や病院経営者はコストの削減になりますが、医師など医療従事者は安全性への不安を感じ、メリットは特にないといえます。健康保険制度にがっちり守られている患者にとっては、医療費の削減の実感は少なく、直接的なベネフィットはあまり感じられません。一方、再製造業者にとっては、新たなビジネスが生まれるチャンスです。

それぞれの立場によって、メリットやデメリットが異なり、一筋縄ではいかないのが、R-SUD制度の一つの特徴です。

病院内では、まずはR-SUD事業の理解、周知徹底を図らないとスムーズに進みません。そのためには事業のイニシアチブをとるキーパーソンが必要になるでしょう。使用済みのSUDの収集には手間がかかるので、収集体制の構築も求められます。分解や洗浄方法についても課題が多く、市場導入も遅れているので、これから皆で取り組んでいかなければなりません。

高階 雅紀 氏
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