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女性疾患と先進医療技術―子宮筋腫について

2005年10月1日

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福西 秀信 氏 新須磨病院婦人科部長

働き盛りの年齢層の女性にとって大きな問題の一つが子宮筋腫です。これまでは入院、手術が行われてきましたが、メスをいれることもなく通院で治療ができるようになりつつあります。

今回は「FUS治療」と呼ばれる先進医療技術を中心に子宮筋腫の治療の現状を報告します。

子宮筋腫とは

まず子宮筋腫ですが、子宮筋の中あるいはその周辺に存在して平滑筋で構成された腫瘍というのが定義です。多くは多発的に発生し、20歳以下では極めてまれ、一方で35歳以上では約4人に1人は筋腫があるとみられます。閉経期以降に筋腫が発育することはまれです。性成熟期に筋腫が大きくなる理由は、卵巣から分泌されるエストロゲンとプロゲステロンが影響していると考えられています。

実際には患者さんのエストロゲンを測定しても必ずしも高い数値を示していませんがエストロゲンレセプターが正常の子宮筋よりも筋腫のなかで高いといわれています。またエストロゲンやプロゲステロンが減少する閉経期以降は筋腫の発育がほとんど見られないことも女性ホルモンと密接に関係していることを示しています。筋腫の徴候としては過多月経、月経困難、不妊または不育などがあり、影響疾患としては貧血、尿路系障害(圧迫による無尿など)があります。また筋腫がある場合の妊娠中には流早産などいろいろな合併症にも注意しなければなりません。

子宮筋腫の手術療法

子宮筋腫の手術療法としては子宮全摘出、子宮膣上部切断、子宮筋腫核出、粘膜下筋腫摘出があり、方法として開腹、膣式、腹腔鏡下、子宮鏡下があります。手術は合併症として出血、感染、癒着、麻酔や薬剤による副作用などが考えられますが、ほかにも「子宮を失うことによる心の問題」があり、手術を避ける道を開く必要があります。

手術をしない治療としては、まず偽閉経療法(GnRHa療法)があります。GnRHは視床下部で産生されるペプチドで性腺刺激ホルモンを分泌させる作用がありますが、この構造を変えることで性腺刺激ホルモンの分泌を抑制させ“偽閉経”とするものです。保存的に子宮筋腫核を縮小でき、手術などの治療前処置として、または自然閉経が近いときに有効性が高いのですが、更年期障害様の症状がでたり、骨塩量の減少を引き起こしたりするために6ヶ月の連続使用が限度となっています。

もう一つが子宮動脈塞栓術療法(UAE)。フランスで開発された手法で、子宮への動脈にカテーテルを挿入して粒子で塞栓することによって、筋腫に栄養を行かなくすることで筋腫核を縮小させるものです。子宮を温存できるほか入院日数が3~5日間と短いといったメリットがある半面、術後に疼痛がある、塞栓後症候群などの副作用があります。痛みは大きな問題でしょう。

相応しい治療法の選択

これらに対して新須磨病院が取り組んでいるのが集束超音波療法(FUS)です。昨年6月から臨床に入っているもので、超音波発生装置によって発生させた208個の超音波を一点に集中させ、治療部位の温度を60~90度にまで上昇させて焼灼します。照射時間は約20秒で、1回の照射で1.5から3ミリメ-トルの丸いスポットで、その長さは10から45ミリメートルが焼灼できます。筋腫の中に一定のマージンを置いてその中に沢山のスポットを作って順次焼灼していきます。手術に際してはMRI三次元画面で治療計画を立て、治療中もリアルタイムで温度上昇が監視できるようになっています。

この治療法では麻酔もメスも必要がなく日帰りが可能で、放射線被爆もありません。繰り返しの治療ができる、術後の投薬が不要という利点もありますが、一方で適応外症例が多い、健康保険適応がないという面があります。適応外としてはMRI検査が受けられないケース、超音波通過域に創部のあるとき、腹壁から14センチメートル以上の仙骨付近の治療、筋腫と腹壁の間に腸管がある場合や、妊娠に対する安全性が確立されていないなどの理由から、新須磨病院ではFUS治療ができたのは同療法を希望して来院された患者さんのうち約4分の1ということで今後に課題を残しました。

適応には制約があるものの、これまでの手術例では生活の質(QOL)の向上に大きな成果を挙げています。今後は診断の精度向上と合わせて、医師と患者さんによる「相応しい治療法の選択」が適切にできるような環境整備に向けて努めていく必要があると思われます。

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