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先進医療における体外診断用医薬品と臨床検査の役割と課題

2004年11月1日

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渡辺 清明 氏 慶應義塾大学医学部中央臨床検査部教授

重要度が増す臨床検査

医療の現場では医師は患者さんの病歴をたずね、身体を診察し総合的に臨床診断をすることから始まりますが、これは「主観的情報」といえます。これに対して臨床検査は、生体試料を分析してその結果から診断に寄与する「客観的情報」に位置します。最近の試料分析の進 歩は顕著で、血液中のたん白、糖をはじめ、ホルモン、腫瘍マーカー、ウイルス抗原・抗体、凝固因子、アレルゲン、遺伝子などの測定が可能となり、医療への 需要は増大する一方となっています。例えば胸痛の方が受診に来られた場合、医師が診察して心筋梗塞を疑った時にはトロポニンやミオグロビンなどの特異物質の測定で確認するというようなケースです。画像診断もありますが、臨床検査は数値として客観的にとらえるので診断に頻用されるほか、患者さんからの「知りたい」というニーズも大きいのです。

このように臨床検査は検診の中核を占めるだけでなく、今後の予防医学や国民の健康増進からも非常に重要になっています。なぜなら「医療は治療医学から予防医学にシフトする必要がある」と考えるからです。悪性腫瘍や血栓症などではとくに早期診断が必要で、疾患が完治可能な微小である段階で発見することが重要です。新薬の開発も必要ですが、「現存する治療方法で疾患を完治できる」段階の微小な病変を検出する臨床検査方法の開発と普及が一段と求められています。

下がり続ける検査実施料

平成15年度の調査によると臨床検査は検体検査だけで1.8兆円が医療保険から支払われていますが、これは医療費全体の6から7%に相当します。このように重要な検体検査ですが、実施料の値下がり(保険点数の削減)が続いています。平成2年に比べるとおおまかにいって半分にまで落ち込んでいるのです。日本の臨床検査は大別して個々の病院が行っている院内検査と登録衛生検査所が行っている、いわゆる外注検査があります。検査所は病院よりも大量に処理し、また相対的に安い人件費で対応できるので、検査に要する費用が少なくて済みます。この実勢価格の低下が保険点数に反映されるわけですが、この基準には院内検査の有効性がまったく考慮されていません。この結果、院内検査は経済的な面で苦しく、検査診断薬会社も経営的に弱くなるという事態を招いています。

大切な国民からの認知

こうした臨床検査の現状を変えるにはやはり一般社会での認知が大切と考えています。検査は予防医学の中心であり、また早期発見による医療費軽減で社会全体の医療費を減少できることも立証されていますが、患者さんにとって検査の現場が「見えにくい」こともあって国民に分かりにくいものとなっています。医療のハイテクというとMRIやPETなど画像診断が想起されますが、体外診断用医薬品(IVD)も非常に高度で先進的な技術を適用して微量分析を行っています。しかし、この点に関してもまだまだ一般からの幅広い理解は得られていません。

今後、臨床検査の一般からの認知度向上を図るとともに、「緊急および迅速な臨床検査の評価」の必要性をアピール、臨床検査室の質の確保、臨床検査室の認定制度の発足に向けて各方面の理解を得ていきたいと思っています。

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