一般社団法人 米国医療機器・IVD工業会

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医療従事者

先進医療技術を取り巻く環境について

2004年8月1日

キーワード

桜井 靖久 氏 東京女子医科大学名誉教授

エレクトロニクス技術の導入で発展する医療技術

先進医療分野において医療技術の果たす役割は大きく、またこの30年間の進歩は非常に早く革新的な技術が登場してきた。画像診断のケースでみればそれまでの平面画像しか得られないレントゲン写真に加えて、70年代にCT、80年代にMRIが実用化され、そして最近のPETとエレクトロニクス技術の採用で一挙に高度化、正確になってきた。画像診断以外ではゲノム解析が進み、個々の患者さんの遺伝子に合わせたいわゆる“テーラーメイド医療”の道も期待され研究も進んでいるが、これも技術の発達の成果といえる。

以前は医薬品と医療機器の費用は10対1程度となっていたが、現在では年間ベースで見ると医薬品6兆円に対して医療機器は2兆5000億円の規模。 30年前、“身体のなかを見る”ことは臨床の医師にとって夢だったが、いまはほとんど現実になってきている。精度からみても開発の当初、MRIは長時間かけてもぼんやり映っているだけだったが、現在は短時間で鮮明な画像を得ることができる。PETは半減期が2時間近いもの(ブドウ糖にフッ素の放射性同位元 素を組み合わせたもの)も開発されて、徐々に設備面の制約も少なくなりつつある。PETとCTを組み合わせることで、1ミリの大きさのがんも発見できるようになったのは予防医学の見地からみて実に大きい成果といえる。医療機器産業としてみても年率6-7%の伸びで、制度の変更などによって一時的には減少することはあっても基本的に“右肩あがり”は続くと予測される。

先進医療は、社会経済からみても合理的

先進医療技術の役割としては、これまでにできなかったことができるようになる「有効性」、「安全性」、患者さんの苦痛を和らげるなどの「低侵襲性」などがあるが、同時に医療コストの削減にも結びつく。たとえばPETはブドウ糖ががん細胞に集まりやすいとの現象を利用して発見するが、これまで以上に早期に発見することで治療をしやすくするだけでなく全体の医療費を削減する。さらには、がんだけでなく死亡率の高い心臓病や脳の疾患も、早期発見による治療が可能になる。さらに―この点が大きいが―患者さんの社会復帰を早めトータルに社会経済上のマイナス幅を少なくすることができる。

重要性を増す広報活動

このように先進医療技術は大きな役割を持っており、機器も貢献度が高いが日本ではあまり一般からの理解が進んでいるとはいえない現状にある。米国では医療機器は「リーデング・インダストリー」としての自負もあり社会全般の理解が深いが、これまで日本(国内企業)ではあまりPR活動を行ってこなかったことも原因に挙げられる。しかし先進医療に貢献している部分は大きく、こうしたことのソーシャル・アクセプタンス(一般からの理解)を高めることは大切といえる。この点からキャンペーン活動は意義のあることだと評価できよう。

健康教育のための「ヘルスケア・パーク」創設を提言

2005年4月から薬事法が改正され、医療機器に審査制度が変わり独立行政法人や民間機関が担当するようになる。また米国のFDAに比較してスタッフの不足が指摘されていた審査担当者の陣容も整いつつあることは前進だろう。こうした制度の充実や医療体制の整備はもちろん重要だが、私は社会が取り組むべき課題として「健康教育」があると指摘してきた。人にはそれぞれ個体差があり、個体差を考慮にいれながら健康を守るということは「セルフケア」に尽きるのではないか、そのための場をなんとか整えられないか。また、現在健康に関することを集積した常設の場所が日本にはなく、私は仮に「ヘルスケア・パーク」と呼んでいるが、こうした場で学校教育では不十分な点を補足し、ひとり一人の未来健康を支える社会基盤を整備することを提言したい。「メディカル・ディズニーランド」といってもいいだろう。

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