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「医療機器産業の発展に何が必要か~アメリカの成功例から学び日本へ提言(上)~」

2013年4月1日

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池野 文昭 氏 米国スタンフォード大学循環器科 主任研究員 大阪大学医学部循環器科 招聘准教授

 

2011年3月の東日本大震災で甚大な被害を受けた福島県の郡山市で昨2012年に「メディカルクリエーションふくしま2012」が開催されたが、AMDD後援のセミナーにおいて日本の医療機器産業の発展について講演する機会を得た。ここにその要旨を述べたい。

ベンチャー企業を買収する米大手

アメリカの医療機器産業の開発パターンを眺めると、ブロックバスター(大型高性能爆弾)と呼ばれる医療機器の多くは、大手企業の研究開発センターから生まれたものではない。実は無数に存在する小さなベンチャー企業が生み出したものなのだ。革新的な医療機器の開発は、とかく失敗リスクが伴うものであり、また、それ以上に常識にとらわれないアイデアがその基本になっている。これは日米に共通した問題点である。

ここまで医療技術が進歩し、Cutting Edge的医療機器が臨床現場で求められている今日、大手研究開発センター内の限られたリソースだけでは、革新的なアイデアはなかなか生まれてこない。そこで視点を外に向け(オープンイノベーション)、無数にあるベンチャー企業の中から、自社のポートフォリオに合ったベンチャー数社に目を付け、その中で最も成功しそうなものを買収していくというスタイルを取っているのが最近の米国大手医療機器企業の傾向である。

しかしスピード感が重要なベンチャーにおいて、その医療機器の多くは、残念ながら完成度はさほど高くなく、商品化のためには、そのPolish Upが欠かせない。また医療機器自体が複雑化してくるのに伴い、臨床試験、製造工程などでより厳格な審査、それに莫大な資金が必要となってきているが、それを満たしながら開発を続けるのは、ベンチャーにとっては非常に重荷であろう。つまりアメリカでの医療機器開発は、アイデアから始まる開発の前半をベンチャーが、そして臨床試験、製造販売など開発の後半を大手企業が担っている。こんな構図が出来上がっているおかげで、大きな成功を収めることができるのである。

日本の医療機器企業の問題点

一方、日本の医療機器産業はどうであろうか?日本では大手医療機器企業の多くは、たいてい自前主義を取っている。もちろん、Appleのように自前で革新性の高い商品を開発できる会社は、世界的にみても当然チャンピオンである。同社にしても現実には多くのコア技術を買収で手に入れている。限られた自社、研究開発センターのリソースだけではなかなか革新的なアイデアは生まれてこないからである。

日本もアメリカのように失敗する確率が高いというリスクはあるが、革新的な開発に挑戦するベンチャーが出てくることが望ましい。大手企業はそのベンチャーを買収し、精度の高い、商品に値する段階に発展させるという構図が国内に創ることができないはずはない。社会的リスクや社内的リスクを取ることができない日本の文化にも、かゆいところに手が届く開発スタイルができるのではないかと考える。

このようなベンチャーは、ダイヤモンドの原石を命がけで採掘する人達にも例えることができるだろう。大手企業は採掘者から原石を購入して磨きをかけ、カットを施して宝飾品の最高峰のダイヤモンドジュエリーを製造販売すればよいのである。こうすればきっと革新的なブランドを数多く生み出せるに違いない。

=つづく

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