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CT検査における造影剤自動注入器の必要性と安全対策について

2012年4月1日

キーワード

中村 泰彦 氏 九州大学病院医療技術部放射線部門 メディカル・インフォメーションセンター

 

X線CT検査では、造影剤自動注入器が活躍しています。コントラストの強い輪切り画像によって、がんなど病変の発見が容易になりました。しかし、1%未満の確率で造影剤が血管外に漏出することがあり、安全対策の確立が求められています。

造影CT検査に不可欠な自動注入器

私は九州大学病院医療技術部の放射線部門に属し、日ごろX線装置やMRI装置を扱っています。昨年1年間では、放射線技師63人で約14万件のX線撮影と約3万1千件のX線CT検査を行いました。このCT検査の57%に当たる約1万8千件は造影剤を利用した造影CT検査であり、全例に造影剤自動注入器が使用されました。

造影CT検査というのは、肘や前腕の静脈からヨード造影剤を毎秒平均3mlの速さで急速注入し、一定時間が経過したところでX線を照射し、人体を透過してきたデータを収集して、コンピューターにて画像処理を行うことで輪切り像(横断面画像)を得ています。造影剤注入後の経過時間によって臓器ごとに濃淡が変化するので、得たい情報に合わせた最適のタイミングで撮影することが求められます。

その具体例として、肝臓に照準を合わせた場合について見てみましょう。上の図は、ヨード造影剤を急速注入したあとの肝臓の造影剤による濃染の推移です。注入を始めて3~4秒後にまず大動脈がピークを迎え、その後門脈や肝臓そのものの濃さが強まってきます。このように画像上のヨード造影剤による濃染の変化情報を総合することにより、肝細胞がんなどの病変を発見するのです。

濃度曲線で撮影タイミングを計る

このように造影剤が到達するタイミングでCT撮影をするには、造影剤自動注入器は欠かせません。かつては100ccほどの造影剤を数分かけて点滴したあと撮影を始めていましたが、マルチディテクターCTという装置が登場してからは、1秒以下の時間で1度に64枚から320枚の画像を得ることも可能になりました。臓器ごとの染まりが瞬時のうちに変化していきますから、臓器の濃度曲線を見ながらタイミングを見計らって撮影します。

現在の造影CT検査では50~150mlの造影剤を一定速度で注入し、全注入に1分もかかりません。撮影のタイミングさえ誤らなければ、高いコントラストを活用して正常組織の中の異常な病変を映し出すことができ、作成した三次元画像により解剖学的形態も把握できるのです。

しかし高速で注入するため、まれに造影剤が血管外に漏出するという事故が起こります。特に高齢の患者さんを始め、どんなに気をつけても血管のもろさなどのため0.3~0.4%の確率で造影剤血管外漏出が発生し、その件数は年間18,000~24,000件と推定されています。

造影剤が血管外に漏出すると、腕の造影剤刺入部が腫れて痛みも出ますから、即時に検査を中断して処置をしなければなりません。コンパートメント症候群が発症したときは、外科的に切開して造影剤を取り除く必要があります。造影剤の血管外漏出を防ぐことは難しく、それゆえ漏出の素早い発見と即座の対応が重要になります。

血管外漏出に検知システムも登場

そこで、血管外漏出を素早く検知する造影剤注入圧監視モニターが開発されました。注入器のセンサーでリアルタイムに計測した圧力を操作室や検査室に表示する装置です。診療放射線技師が注入開始と同時に患者さんにマイクを通して「体が熱くなってきましたか」と尋ねて注入の始まりを確認し、モニターに異常な波形が現れた場合、独自の判断で注入を停止します。そして刺入部に腫れがないかどうかを点検します。

ただ、注入圧の変動に関しては判断基準が確立されていないので、注入停止の素早い判断は技師を悩ませます。初めからやり直すのが大変なので、即決するのに勇気が必要なのです。

最近の漏出検出器は、注入圧の変化ではなく、赤外線の反射波や高周波を利用するものが登場しています。しかし現行の診療報酬制度では、CT撮影における点数は血管外漏出検出器を使っても使わなくても同じため、患者さんには有用な安全技術であっても、病院側のコスト増を懸念し、導入を控える病院が多いのが現状です。医療安全管理加算もまだまだ十分ではないため、今後の展開に期待したいと思います。

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