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完全予防の態勢が整った子宮頸がん

2011年12月1日

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平井 康夫 氏 東京女子医科大学 産婦人科 准教授

 

日本では10年ほど前から子宮頸がんの若年化が進んでおり、20代から発症しはじめて30代~40代にピークが現れます。そして年間約8,000人が子宮頸がんに罹患し、そのうち約2,500人が命を落としているのです。日本でも2009年秋にヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンが認可され、10~15歳の女性に対して接種が始まりましたが、子宮頸がんを完全に予防するには精密な検診が欠かせません。

女性の1割に現れる前がん病変

ワクチンの接種を受けなければ大半の女性は生涯に1~2回、子宮頸がんの原因ウイルスHPVに感染します。ふつうは本人の免疫力によって1年以内にウイルスは排除されるものですが、ほぼ1割の人では感染が持続して子宮頸部の細胞が前がん病変に変わります。この前がん病変の段階で発見して手術(円錐切除)を受ければ、がん化を起こすことなく完治するのです。

子宮頸がんの診断には細胞診検査は欠かせません。これまで細胞診に利用する子宮頸部の細胞を採取するとき綿棒でこすり採っていましたが、アメリカなどでは“ほうき”のような特殊な形のブルームブラシを使った「液状化検体細胞診」(LBC)によって子宮頸がんの発見率が高まっています。多数の細胞を含む標本が作れるので、がん発見の精度が上がるのです。すでに日本でもLBCのテストが始まっており、間もなく保険に収載されて広く活用できるようになるのではと期待されています。それにLBCには、特定の細胞の遺伝子解析ができ、同じ検体でHPV検査もできるといった利点もあります。

要するに子宮頸がんは、その前段階として前がん病変が存在し、細胞診検査やHPV検査を組み合わせれば前がん病変が早期に発見できるという特徴があり、ほぼ完全に進行を食い止めることができる病気となっているのです。

他国と比べて極端に低い受診率

ところが残念なことに、日本の子宮頸がん検診の受診率は24%程度にとどまっていて、アメリカやヨーロッパなどの検診先進国の3分の1にも満たないのです。中でも妊娠・出産を控えた20代、30代の女性が最も低いのですから重大です。がんが進行して子宮切除にでもなれば、子どもが産めなくなるだけでなく、死亡にもつながります。

現時点で考えられる最良の子宮頸がん予防法は、まず10代でHPVワクチン(1次予防)を接種し、20代以降は1~2年ごとに細胞診検査(2次予防)を受けること。そして医師が「必要」と判断したときに、HPVのDNA検査を受ければいいのです。さらに完全な予防に向けて世界中の専門家が研究を進め、細胞診検査を確実にするための努力も引き続き行われています。しかし何よりも、女性は一人残らず検診を 受けることがカギなのです。

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