一般社団法人 米国医療機器・IVD工業会

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患者団体

自分に合った治療が受けられるように

2015年1月1日

キーワード

中田 郷子 氏 認定NPO法人 MSキャビン 理事長

多発性硬化症(Multiple Sclerosis、以下MS)は免疫系が誤って脳・脊髄・視神経を攻撃することによって起こる神経難病です。原因不明で特効薬はなく、世界の推定患者数は2013年現在230万人とされ、欧米に多い病気です。日本では2012年度現在17,073人が認定されていて、患者数は年々増えています。また、MSは20~40代の若い人に多く発症します。社会生活に与える影響は深刻で、多くの人が就労に悩みを抱えています。近年、経過を改善する予防薬がいくつか開発され、その恩恵を受けて普通に生活ができる人が増えて来ました。しかし、一方でそれらの薬の使い方が難しくなっている現状もあります。というのもMSは個人差が大きく、治療の反応性も様々です。MSと診断されていても予防薬で改善しないことや、ひどい場合は悪化することもあります。そのひとつが視神経脊髄炎(Neuromyelitis Optica、以下 NMO)です。

NMOは血液中の自己抗体によって起こる病気で、これまではMSと診断されていました。中にはMSの治療で悪化してしまった人もいます。しかし、数年前にNMOの自己抗体が発見されてから両者は鑑別されるようになり、MSの治療がNMOを悪化させることもわかりました。今ではMSとNMOの治療は明確に分けて考えられています。

といっても、「MSのようなNMO」「NMOのようなMS」など、どちらとも確定できないグレーゾーンの存在があります。専門家はMSにはまだ、いくつかの病態が含まれているだろうと研究を続けてくださっているのですが、現段階では、このグレーゾーンには診断にも治療にも明確な基準がないため、予後は主治医の腕にかかっています。

治療薬の開発が進むのは大変ありがたいことなのですが、そもそも診断がはっきりしていなければ、自分に合う治療法がわかりません。「自分の病態がどんなもので、それに合うのはこの治療」といったことが、わかるようになればと願っています。

MSキャビンはMSとNMOの情報提供活動のひとつとして、年末に医療フォーラムを開催しています。患者・家族だけではなく企業と医療者もともに、最新情報を学べます。2014年は511人のご参加をいただいて、そのうち企業参加は78人でした。ほとんどが製薬企業であり、診断薬関連の会社は二桁にも満たなくて、私どもの力不足を痛感しているところです。

MSとNMOの方が自分に合った治療が受けられるようになるよう願いつつ、私たちもできることを努めたいと考えています。

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