一般社団法人 米国医療機器・IVD工業会

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患者団体

医療技術の進歩~さらなる開発を求めて~

2012年10月1日

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高石 道明 氏 公益社団法人日本オストミー協会 会長

大腸癌や膀胱癌または炎症性腸疾患などのため、便や尿の排泄経路を変更して腹部に設けた穴(ストーマ)から排泄物を出し、穴を覆うように肌に貼りつけた袋で排泄物を受けて処理しているのがオストミー患者である。

オストミー手術を受けた仲間という意味で、世界中の患者は互いを「オストメイト」と呼んでいる。日本では身体障害者に認定されるので、障害者手帳交付数から推して人口1,000人あたり約1.5人、つまり20万人ほどの仲間がいる。

人工的に造られた排泄口は、括約筋がないため、自分の意思で開け閉めが出来ず、出っぱなしの排泄物を受けて溜める袋「ストーマ袋」(stoma bag)なしでは普通の生活が送れない。つまり、オストミー患者の生活の質(QOL)は、装具の良し悪しにかかっているのである。

オストミー手術は近代医学以前から行われていたようであるが、今日のオストメイトが使っているような良質のストーマ装具が開発され普及したのは、せいぜいここ30~40年のことだ。それ以前はおむつを当てたり、容器をベルトで固定するなど、非粘着型の装具で間に合わせていた。しかしこれでは便尿が漏れて臭く、皮膚荒れが防げない。1952年に米国でカラヤガムが接着剤として有効なことが分かり、それ以降は 袋を肌に粘着させる形のものが主流になった。また1980年代以降には合成系の皮膚保護剤が開発され、軽くて丈夫かつ柔らくて肌にやさしい装具が普及した。

患者会である「日本オストミー協会」は、その前身の任意団体時代を含めて43年の歴史を持っており、わが国のストーマ装具の発展は我が協会の発展の歴史と重なっている。医療界とメーカーと患者会が協働しながらより良い製品を求めて来た歴史でもあったと思う。

私自身は18年前に手術を受けてストーマ生活に入ったが、1週間ごとの装具の貼り替えにも慣れ、会長職のかたわら趣味の楽器演奏や登山を術前と同様に楽しんでいる。こうした人生が続けられるのは、ひとえにストーマ装具が進歩したおかげなのである。

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