医療技術の進歩~さらなる開発を求めて~
2012年4月1日
- キーワード
斉藤 幸枝 氏 全国心臓病の子どもを守る会 会長
1963年、全国心臓病の子どもを守る会は誕生しました。今から50年前のことです。当時の医療技術は今とは格段の差があり、また手術には多額の費用が必要な時代でした。心臓病児を抱えた親たちの多くは、ただ見守ることしか出来なかったと、当時の会報に綴られています。
それでも我が子を救いたいとの一念で、心臓病児を持つ親たちは集い、実情を訴え、理解を求めて様々な活動を展開いたしました。その思いは国を動かし、先天性の心臓病の手術や通院にかかる費用が公費助成制度の対象となりました。
この制度と専門医の先生たちを始めとする医療関係の方々のたゆまぬ努力により、多くの心臓病児たちは命を救われるようになりました。そのおかげで、今では就職や出産など成人期の課題が会の重要なテーマとなってきています。
一方、医療技術の進歩に欠かせないのが、人工心肺などの医療装置や器材の開発です。中でもカテーテル治療の開発は対象病児にとって、大変な朗報でした。患者への負担の少ない術式とそれを可能とする器材のさらなる開発・改良を望みます。
また、単心室や左心低形成等重症心奇形の中には手術をする術のない子どももいます。そのような子どもと親に希望を与えるのが、心臓移植や再生医療、人工心臓の開発だと思います。
会として心臓移植シンポジウムを開き、日本で移植を受けられるようにと呼びかけてから17年、やっと15歳未満の子どもも移植を受ける事が可能になりました。しかしいまだに小さな子どもへは一例も行われず、リスクの高い渡航移植に頼るしかありません。理解を求める取り組みが必要です。
成人男性でなければ対象となれないほど大きかった体内埋め込み型の補助人工心臓も随分小型化されたものが認可され、使用されるようになりました。再生医療による心筋の機能回復の成功例も報告されています。
このように医療技術の進歩に大きな期待を寄せるとともに、病気に負けず、病気に立ち向かう強さを病児に醸成することが会の目的でもあります。そのためにも心臓病児や親たちのつながり、医療関係者の方々との絆をより深めていく所存です。
今年私たちの会は創立50周年を迎えます。共に歩んできた多くの方々と祝い、新たな目標に向かって進むことを誓い合う大会を11月、会発祥の地である横浜で開きます。多くの方々のご参加をお持ちしています。