確立が待たれる肝がんの根治療法
2010年5月1日
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赤塚 堯 氏 特定非営利活動法人 東京肝臓友の会 理事・事務局長
日本での肝炎患者会は1971年(昭和46年)、「肝炎友の会」の発足から始まります。当時は肝炎の原因は不明で、診断も治療法も確立されておらず、肝庇護剤や漢方薬の服用しか手の打ちようがなかったのです。B型肝炎ウイルスがまだ「オーストラリア抗原」といわれていた時代で、多くの患者が肝硬変や肝がんに進行して命を奪われました。
その後、A型ウイルス、B型ウイルスが発見され、1988年には「非A非B型肝炎」といわれていたものがウイルス遺伝子の発見によって「C型肝炎」と判明し、ウイルス肝炎の診断法と治療法は飛躍的に進歩しました。血液化学分析、遺伝子工学、画像診断などの発達が肝炎の治療に画期的な前進をもたらしたのです。特にインターフェロン治療の確立、そして1992年の保険適用は、ウイルス排除の根治療法としてC型肝炎患者に大きな期待と生きる勇気を与えてくれました。現在、ペグインターフェロンとレべトールの併用療法(標準的な治療)により、C型肝炎の治癒率は5割を超えています。また、B型肝炎も核酸アナログ剤により急速に治療が進んでいます。
しかし残念ながら、完治しないC型肝炎、B型肝炎の患者はまだまだ多く、肝硬変や肝がんに進展して年間約35,000人(毎日120人)が亡くなっています。「肝炎の治療」は、イコール「肝がん予防」であり、肝炎の進行状況、肝がんの早期発見には血液検査はもとより画像診断は不可欠です。超音波検査、CT、MRIの進歩は肝がんの予防と早期発見、治療に絶大な貢献をしています。薬剤による根治的な肝がん治療法が確立されていない現状では、ラジオ波焼灼術など肝がんを除去する療法は医療技術の進展に大きく寄与しています。
「肝炎友の会」を継承して現在、全国組織として日本肝臓病患者団体協議会(会員約10,000人)があります。「東京肝臓友の会」は1990年に発足し、約3,500人の会員を擁しています。当会はNPO法人として全国からの電話相談を受け付け、さらに肝炎ウイルス検査の啓発普及活動、講演会の開催、会報発行などを行って、広くウイルス肝炎の正しい知識や最新治療の普及などに努めています。肝炎患者の高齢化、病状の重症化は年々顕著になってきています。昨年、「肝炎対策基本法」が成立しましたが、肝がん予防の徹底、再発阻止、根本的な治療の一層の進展を切望しています。