医療政策に患者の声を
2008年4月1日
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長谷川 三枝子 氏 患者の声を医療政策に反映させるあり方検討会 座長
日本の医療政策は、長い間患者不在の中で、行政や医師会などだけで決められてきました。しかし近年、患者の要望などがあってがん対策基本法が成立するケースにみられるように、患者の声を反映させる動きが出てきています。
2005年に日本医療政策機構がまとめた「医療政策に関する世論調査」によれば、医療に対する国民の不満は、医療の質やサービスに対してではなく、国民不在の制度決定プロセスに集中していました。また、医療制度改革を主導すべき主体は「市民・患者代表」という回答が最も多く、医療制度の崩壊が叫ばれている時代を背景に今、患者の声を医療政策に反映させる制度改革が求められています。
あり方検討会設立へ
このような時代背景のもと、東京大学医療政策人材養成講座研究班(伊藤雅治代表・2006年発表)の「患者の声を医療政策決定プロセスに反映させるために」と題する論文の提言を受けて、10の患者会による「患者の声を医療政策に反映させるあり方検討会」(座長・長谷川三枝子=社団法人日本リウマチ友の会会長)を設立しました。
提言を受けて
まず、提言に対して全国の患者会がどう考えているかのアンケートを2007年10月に全国の患者会に対して行い、292の患者会から回答を得、その結果を「患者中心の医療を考えるシンポジウム2007」で発表いたしました。「医療政策の決定プロセスに患者や市民の声を反映させる仕組みの構築は不可欠か」「患者団体は協力して政府に働きかけるべきか」「患者会の横断的な連合組織は必要か」の問いに対する回答には、いずれも9割の賛成がありました。また、これまでは疾病の違い等から患者会同士がなかなか連携できていない実態や、個々の患者会には新たな活動を実施する資源・体力が不足している、という課題も浮き彫りとなりました。今後はこれらの課題を乗り越え、患者の声を反映させるための仕組みを構築することが必要です。
厚生労働省から参加されたパネリストの方からも、「患者の声を聞くのは当然」との発言があり、意を強くしました。今後目標達成のために互いの一致点を見いだしながら患者会同士の連携の道を探るとともに、患者の声を行政や議会に届けるためのサポートシステムを構築するという課題に取り組むべく、2008年1月より、あり方検討会の中で具体的な検討を始めています。まずは、シンポジウムの報告書の発送や情報発信などにより、皆さまとの連携をとっていく段階です。