根治療法の早期実用化を期待
2008年1月1日
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植本 泰久 氏 全国パーキンソン病友の会 幹事
パーキンソン病は、脳内の中脳における神経細胞が何らかの理由で変化しドーパミンが減少することにより身体機能に多大な影響が出る神経変性の疾患です。手足の震え、筋肉の固縮、身体の動きの緩慢や、姿勢が前かがみになる姿勢反射障害などの症状が中心で、その他にも排尿障害、便秘、立ちくらみなどの自律神経障害といった症状も見られることがあります。現在日本には、15万人程度の患者がいると推定されています。
1976年に設立された全国パーキンソン病友の会は、現在44都道府県に支部を持ち、約8,000人の患者や家族の方々が所属する民間の団体です。設立当時の日本では、パーキンソン病を診断できる神経科の医師は少なく、有効な治療法が確立されていませんでした。そのような状況の中で、当会の会員はパーキンソン病が特定疾患としての認定を得るために尽力しました。また対処療法は存在するものの、現在もなお根本的な原因が解明されていない中で、患者の方々の病気や将来への不安の緩和、そして一般の方々に対する認知度の向上を目的とし、会報誌の発行、集会の開催、電話相談などを行ってきました。
現在この病気の治療法としては、投薬療法と外科治療があります。しかし、減少したドーパミンの働きを補う投薬療法は、幻覚や歩行障害などの副作用のリスクを伴い、長期間摂取をすることで、薬効の持続期間も徐々に短くなってきます。また脳に電極を植え込む先進医療の脳深部刺激療法といった外科手術においても、根治治療ではないために、患者の方々は、再発の不安を抱えることになります。このように現存する治療法は、現状維持のための治療です。そのため根治治療が期待できる、現在研究開発中の、変性脱落したドーパミン神経細胞の再生をする神経幹細胞や胎生幹細胞(ES細胞)による移植療法の実用化を切望しています。