てんかんがあっても安心して暮らせる社会の実現に向けて
2020年2月1日
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梅本 里美 氏
公益社団法人 日本てんかん協会(波の会) 会長
1973年に「小児てんかんの子どもをもつ親の会」と「てんかんの患者を守る会」が発足し、わが国のてんかん運動がスタートしました。そして、この両団体の統合で1976年に「日本てんかん協会」が誕生しました。現在は、てんかんのある当事者とその家族を中心に、専門医や専門職などの支援者も加え、約5,000人の会員で構成しています。全国に支部があり国際てんかん協会(IBE)の日本支部として、社会啓発、相談援護、調査研究、施策推進などてんかんに関するあらゆるテーマに対応しています。
てんかんは脳神経の病気で、国内にも約100万人の仲間が推定されます。脳に流れる微弱な電気が、何かの原因で「ショート」することでさまざまな症状を伴うてんかん発作がおこります。このてんかん発作をくり返す病気の総称が、てんかんです。
てんかんの診断と治療は飛躍的に発展し、全体の約8割で発作症状の抑制が可能です。主な治療法は薬物治療で、これを外科治療や食事療法が補完します。治療を迅速で効果的に行うためには、検査・鑑別が重要です。てんかんでは、脳波検査や画像診断(MRI、SPECT、PET、脳磁図)が重要です。この検査で、てんかんの種類、てんかん発作のタイプを見極め、国際的なてんかんとてんかん発作の分類に基づき治療を開始します。最近は、てんかん発作の予知をする機器の開発研究も行われ、てんかんのある人が安心して社会生活を送ることのできる環境整備が進んでいます。
国内では「てんかん地域診療連携体制整備事業」が政府と都道府県により全国に広められ、また多くの製薬企業の尽力で新規抗てんかん薬の使用も可能になりました。これらに加え、検査・鑑別・治療の機器がさらに発展することが、てんかんがあっても安心して暮らせる社会の実現に大きく寄与すると信じ期待しています。