子宮頸がん検診と健康教育の推進について
2018年10月1日
難波 美智代 氏
一般社団法人シンクパール(Think Pearl) 代表理事
現在、日本では20代女性の死亡原因の第1位が自殺、第2位が「がん」です。その中でも一番多いのが「子宮頸がん」です。子宮頸がんの発症率は、過去20年近くにわたって増加しています。年間約1万人(上皮内がんを含めると約3万人)が子宮頸がんを発症し、年間約3,000人が子宮頸がんで亡くなっています。働き盛りで結婚、出産の適齢期であり、子育て世代の20代、30代の女性がかかりやすい子宮頸がんは、少子高齢化、人口減少の進む日本社会や経済への影響が著しく大きい疾患です。しかしながらいまだ政府の対策も十分に成果が得られず、検診率も40%弱にとどまっています。
シンクパールは、子宮頸がん検診の推進と健康教育を行う一般社団法人です。現在、大学での授業やシンポジウム、企業への研修、コンサルティングなどを主な活動としています。設立の経緯は、私が35歳の時に子宮頸がんを罹患し、36歳にして子宮を全摘出、一生涯出産が叶わない人生になったことから始まります。性経験のある約80%が感染しているとされるHPV(ヒトパピローマウィルス)の進行が原因であるため、ほとんどの女性たちにリスクがあるにも関わらず、この人生の危機を教育現場で教わった記憶もなく、信頼出来る情報がどこにあるのかもわからず、途方にくれた経験から設立を決意しました。シンクパールを訪れた女性の中には、19歳で亡くなった方もいらっしゃいますし、子宮を失ったことで、結婚はおろか恋愛にも消極的な女性たちが多くいます。
教育、啓発、法整備、財源確保など、課題は山積しています。ですが、日本には検診に関連する精度の高い医療機器や優秀な病理の専門家がいるにも関わらずこの低い検診率を、まずはなんとかしなくてはなりません。個人がヘルスリテラシーを高め、検診への行動変容を起こすために社会のしくみを整えること、そして産官学と医療の連携体制を整え、予防対策と評価検証のロードマップを構築することが重要です。とりわけ身近な医療者であるかかりつけ医の存在は、すべての国民が未然に病気を防ぎ、健康的で生きがいを持って暮らすためにより必要とされています。
策定に参画していた、厚生労働省の第3期がん対策推進基本計画も今年3月9日に閣議決定され、9月からは、経済産業省「健康経営」の評価項目に、受動喫煙防止の対策が必須とされました。さらに女性の健康施策の拡充が決まったことなど、各分野での対策が進んでいます。我々がん患者や経験者そしてその家族の尊厳が守られ、予防医療と早期治療が実現する社会に期待しています。