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小児脳腫瘍の治療法と今後の課題

2017年6月1日

キーワード

馬上 祐子 氏 小児脳腫瘍の会

小児脳腫瘍は、日本のこどもの病死原因第一位である小児がんの中でも死亡率が最も高い疾病です。小児がん全体では毎年推計2500人ほどの発症の中、白血病に次いで多く500名ほどの発症といわれていますがタイプは100種類以上あり、大変な希少疾患の集まりです。

小児は、化学療法や放射線療法が成人にくらべ効果があることから、小児脳腫瘍でも髄芽腫のようにここ10年大きく治療が前進している疾病もありますが、びまん性小児脳幹部グリオーマのように、決定的な治療法がなく、残念ながら発症から短期間で予後が悪くなってしまう疾病もあります。こどもの場合、放射線治療を3歳以下に行うと知的な障害が残ることが知られるようになり、放射線ではなく大量化学療法で治療を行うなど「年齢、腫瘍の位置、悪性度」により治療方法が大変多岐にわたり、関連科の集学的治療が大変望まれる疾病でもあります。成長発達期にこどもの脳を手術し、強い薬物療法、放射線治療を行うために、運動障害、内分泌障害、精神障害などの多くの障害、後遺症、晩期に起こる合併症をいくつも抱え、毎日の生活に困難を抱えながら一生過ごす方も多くいます。

診断についても、吐き気や頭痛、ものが二重に見えるといったこどもの一般的な病気の症状と区別がつかず、患者家族が小児科、眼科、耳鼻咽喉科、精神科など様々な科を訪れ、病気が進行してやっとわかるケースがあります。早期発見のためには、かかりつけ医への小児脳腫瘍の研修を通して啓蒙とともに、画期的な診断機器、診断ツールの開発や医療連携などが求められています。

脳腫瘍の摘出は、脳の損傷となりますが、必要な場所を正確に摘出し、少しでもダメ―ジを少なくするため、ナビゲーションシステム、マッピング、覚醒下手術、術中蛍光診断、術中MRIなど、非常に多くの新しい医療機器や技術が、現在は使用されるようになってきています。昨年陽子線に関しては小児固形腫瘍の保険収載がされましたが、様々な放射線医療機器や、新たな医療機器の開発に関し、治療向上とともに後遺症や合併症を減らす機能が大変望まれています。

こうした高度医療機器に関して、自分の疾病にどんな機器が必要であるのか、またどこに機器があるのかを患者は簡単に知ることはできません。これからの医療機器や診断技術の進歩が患者家族にとってわかりやすく理解でき、また迅速に選択できる時代となり、治癒率の向上とともにこどもたちのよりよいQOLが大きく進むことを大変期待しています。

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