小児がん治療の課題と将来
2016年11月1日
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公益財団法人がんの子どもを守る会
当会は1968年に設立された小児がん患児・家族の会です。現在、東京の本部及び大阪事務所と全国21か所の支部を中心に、ボランティアや医療関係者などにご協力いただきながら、相談事業、療養費援助事業、情報提供事業、広報活動など、様々な活動を行っています。
小児がんは、乳幼児期を好発年齢とする白血病や脳腫瘍など、数100種類にものぼる小児悪性腫瘍の総称であり、発症数は小児がん全体で年間約2500~3000人、そのほとんどが原因不明の希少疾病です。また、小児がんは治療期間が長く、子ども医療費助成制度や小児慢性特定疾病医療費助成事業などの公費負担があるものの、医療費や療養費の負担は大きくなります。それだけではなく、治療中には、家族の二重生活、治療中の学校や幼稚園との連携、きょうだいへのケアなど、患児・家族には、精神的・経済的にも大きな負担がかかってきます。
現在、疾患の種類にもよりますが、約7—8割の子どもたちが治療を終えることができると言われています。しかし、治癒率の向上に伴い、治療後の復学・就労の問題、結婚出産などの課題に加え、治療による後遺症や晩期合併症、根治のできない残存腫瘍の治療の長期化により、がんそのものの治療を終えた後の経済的・心理社会的負担の増加も新たな課題となっています。一方で小児がんは子どもの病死数順位の第一位であり、年間約500人の幼い命が失われています。
小児がんは、増殖スピードが早いこと、深部に発生することなどの理由で早期診断が難しいとされています。また、多くの小児がんは早期診断が予後に影響を与える因子にならないことは報告されてはいるものの、画像診断などの診断技術の向上によって、部位や進行度などが正確に評価できるようになったことで、小児がんの治療成績が上がったとも言われており、確実な診断が求められています。
鑑別すべきがん種も多岐にわたり、乳幼児期が好発年齢でもある小児がんにおいては、画像、病理学的検査のみならず、染色体・遺伝子検査、免疫学的検査など先進医療技術による診断によって、確実な診断が可能になってきましたが、こうした先進医療は、その後の個別化医療へも繋がると、期待が寄せられています。
治療においても、先般、保険収載された粒子線治療のように、小児期での濃厚な治療の影響による後遺症や時間が経過してから新たに起こる疾病や障がい(晩期合併症)の発症を防ぐような、より侵襲性の少ない治療が求められています。同時に、たとえば、四肢の切断や人工関節による機能障がい、視力・視野障がいを補うデバイスやiPS細胞などによる再生医療など、後遺症・晩期合併症に対する医療が発展を遂げ、患者負担の少ない先進医療を小児がん患者が受けられるようになることを願ってやみません。