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報道・医療関係者

医療機器産業における消費税問題と産業の役割

2014年4月1日

キーワード

船本 智睦 氏
TKC医業会計システム研究会 京都府リーダー

 

はじめに

2014年4月より消費増税とともに、診療報酬は実質マイナス改定でスタートとなりました。医療機関においてはますます厳しい経営環境下に晒されますが、医療機器産業にどのような影響が生じるのでしょうか。また、医療機器産業はどのような役割を果たす必要があるのでしょうか。

1. 医療における消費税問題

消費税は、一般的には“事業者自身に何ら負担が生じるものではない”とされています。

一方、保険医療機関の取り扱いについて、診療報酬などの保険収入は、非課税取引なので、“売上に係る消費税”はありませんが、診療材料、医療機器等の購入に対しては消費税がかかります。これらの“仕入れに係る消費税”のうち、消費税の計算ルールとして控除対象となるものは、課税売上(差額ベッド代、健診代等)部分に限られており、非課税売上(診療報酬等の保険収入)対応分は控除されません。したがって、保険診療が主体の医療機関は、大部分の医業収入が非課税なので、仕入れに係る消費税が控除できず、最終消費者に代わり医療機関がコスト(控除対象外消費税負担)負担しています。消費税が医療機関のコスト負担として重くのしかかっていますが、特に急性期病院の経営に大きなインパクトを与えるといわれています。

2. 医療機器産業に与える影響

医療機関は、消費税負担を大きな事業リスクの一つであると捉えています。医療機関における消費税対応といえば、どうしても費用管理が先行することになります。すなわち、「価格を安くしたい」という心理が医療機関サイドに働くと、コスト負担を回避するために、真っ先に費用の大きなウエイトを占めている材料費や設備関連費用の削減に着手します。医療機関は、材料費等の購入・使用・管理について再確認を行い、徹底的な効率化を目指し、様々な取り組みを実施することが想定されます。例えば、オペの使用器具のセットを見直した結果、不必要な器材・器具を廃棄することになるかもしれません。また、診療材料の同種同効品の絞り込みを進めることにより、品目数の削減と一品目当たりの数量の増大を図り、単価の引き下げ交渉が加速化。さらに、共同購入等を通じて購入費用の削減をより推進するために、連携病院間での統一化を図って、汎用品の購入を進め、メーカー間の競争を促す動きさえ見られます。高度急性期病院においては、最新でスペックの高い医療機器導入を検討する傾向にあります。ただ、大型装置は高額となるため、更新時期を迎えるにもかかわらず、積極的に投資を行わない、あるいは必要な設備投資そのものを見合わせる可能性が高いといえます。そうなれば、高額=高度先進医療機器は一部の高機能病院のみに集約される傾向になると、国内の市場規模は大きく縮小すると予測されます。

3. 医療機関に対する医療機器産業の役割とは

医療機関の事業リスクである消費税負担は、病院経営に大きな打撃となり、変革が急務となります。そのようななかで、医療機関は購買活動や費用管理についての課題を抽出した上で、課題をクリアするための具体的な考え方や戦略の立案を検討し、生き残りをかけた取り組みを行うでしょう。しかし、中小規模の医療機関の経営体制は、脆弱であるがゆえに、明確な経営対応は難しいのが実情です。ただ、手をこまねいていると、さらなる税率の引き上げと医療費抑制政策が予定されているので、民間病院の経営は壊滅状態となります。

その際、医療機器産業は改めて何をすべきなのでしょうか。そもそも現段階で、販売先である医療機関の経営状況をどこまで把握できているでしょうか。また、医療材料・医療機器の購入時には費用対効果の示唆はされますが、その後は特に医療機関に対する経営成果の検証はおそらくほとんどの企業が行っていないのが現状ではないでしょうか。医療機関等の課題は山積し、経営ニーズは散見しています。これら医療機関の課題や経営ニーズとは何かを今一度把握し、自社の支援体制の構築に向けたアクションプランを確立する必要があります。

具体的には、医療機関の意思決定機関(院長や用度課、業務委員会等)に対し、出来るだけコストパフォーマンスの高い商品を提案し、稼働率アップや確実な保険請求による収益確保のみならず、新たな収益につながるような価値の提供を行うことだといえます。

また、消費税増税が医療機器産業に与える影響は、医療材料や医療機器を提供する企業側の様々な事象に大きな影響を与えますので、いかに医療機関に高付加価値なものが提供できるかを念頭に置きながら、価格設定や商品戦略を構築する良い機会だともいえます。

終わりに

消費税率引き上げにより医療界並びに各医療機関が直面している消費税負担問題が一層拡大する現実に対して、これから周辺産業はできる限り自らの身に降りかかる問題として一刻も早くアクションを起こす必要があります。医療機関の存続なくして周辺産業は成立しません。一方、医療界も保身のためだけに、消費税率の引上げによる周辺産業への価格交渉をはじめ不合理な対応を求めることは何ら得策ではないことを促すことも必要でしょう。双方が長期的視点に立って、企業と医療機関の強固な信頼関係の構築を図り、今まさに医療機器産業は医療の適正な効率化の推進を踏まえて、医療機関とともに地域医療と雇用に貢献することが望まれるのではないでしょうか。

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