一般社団法人 米国医療機器・IVD工業会

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報道・医療関係者

技術革新によって世界の患者さんを元気に

2012年10月1日

キーワード

ダニー・リスバーグ 氏
欧州ビジネス協会(EBC)副会長/医療機器委員会委員長
㈱フィリップス エレクトロニクスジャパン 代表取締役社長
フィリップス・レスピロニクス合同会社 職務執行者社長

 

日本が抱える高齢社会への課題

どの先進国でも高齢化が進行中ですが、日本ほど顕著に高齢者の急増、医療費の増加、医療従事者の不足などを経験している国はありません。今後2050年までに、日本では大幅な人口減少が起こり、65歳を超える人口の割合が40%に達すると予想されています。その結果、経済や文化、そして医療の面にも大きな変化が起こるに違いありません。

日本の医療制度は、医療レベルや利便性で世界最高レベルにあります。現在、日本人が1年に病院を訪れる回数は平均約14回で、他の先進国の3倍に当たります。また日本では病院の数が他国に比べて2倍、病床数が3倍もあり、入院期間も2~3倍長いのです。多くの国でも医療の財源確保に四苦八苦している状態ですから、日本が人口や財政の圧力にさらされるのも当然のことといえます。

これらの対策を考えるとき、医療機器、IT、情報管理といった技術革新が大変重要になるはずです。またビジネスや経営の革新も欠かせません。人材と最適な制度がなければ、今後の医療を切り回すのは不可能です。

病院と家庭をつなぐ在宅ケアへ

高齢社会のニーズを満たすには、病院と家庭をつなぐ新技術の導入がカギとなります。より多くの高齢者が、より長く独立して生活できるようになれば、費用対効果の高い医療制度が構築できますが、それには患者さんと医療従事者、民間部門と政府、革新者と開発者の連携が不可欠です。

日本の文化はそもそも保守的で、特に高齢者は慣れ親しんだ伝統や生活習慣を変えたがりません。医療は極めて個人的問題であり、各人がどのような生き方あるいは死に方を選ぶかに関係します。それに多くの高齢者は、できるだけ家族に負担をかけず、少しでも長く地域社会に貢献したいと考えています。医療制度にどのような変化が起こったとしても、こうした普遍的な特質を敬い、尊重しなければなりません。

20世紀の病院をベースにした医療制度は、これからの経済と人口の実情にマッチしません。つまり今後の医療は治療を重視したものではなく、予防や検診、早期発見に重点を移す必要があるのです。また健康管理など日常的な医療に病院を使うのは、無駄が多すぎます。それに代わって登場するのは、革新的な在宅医療システムに違いありません。

これからの病院の役割は、安全面や技術面で在宅では難しい診断・治療に重点が置かれるでしょう。病院における技術革新は、家庭で治療を継続できるようにするためにも必要なのですが、残念なことに有望な技術の多くにはまだ保険が適用されていません。

未来に続く医療の架け橋をめざして

在宅医療は進化しつつある市場であり、慢性疾患の増加や高齢化社会によって生み出される大きな需要を満たすため、新たな方向に成長すると予想されます。ちなみに、フィリップス社では現在、4つの在宅ケア市場(在宅人工呼吸療法、睡眠時無呼吸症候群に対する治療機器、吸入療法などの呼吸ケア、高齢者向け緊急通報サービス)に取り組んでいます。緊急通報サービスでは、ペンダントを身に着けた方の転倒を検知し、自動で当社のコールセンターに通報します。ペンダントを落とした場合や休息の目的で横になった場合と、通報が必要な転倒の違いも判別します。

この数十年間、日本は技術革新の先駆者として世界を変えてきました。フロッピーディスクやトランジスタラジオ、さらに大容量光学メディアの基礎を築いた青色LEDを発明しました。また日本の「ロボット」は、ボールを投げたりバイオリンを弾いたり、料理さえやってのけます。また、介護施設ではアザラシの赤ちゃんロボットが患者さんの心をなごませるのに役立っています。最近では、操縦棒1本で動かせるオートバイのような車椅子も発表されました。こうした日本の技術力が生かされれば、世界中の患者さんの診断や治療、生活の質の向上に貢献できるものと確信します。

私たちは皆、革新をもたらす技術によって患者や臨床医に力を与え、将来に向けた医療の架け橋を築くという役割を担っています。必要なサポートを提供できるように家族を教育し、政策指導者が正しい決定を下せるようにリードし、そしてイノベーションを真に受容し活用することによって、より良い未来を手にすることができるのです。

(原文は英文)

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