医療機器の効率的な利用で医療費の抑制を
2011年12月1日
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日比野 守男 氏
東京医療保健大学教授 東京新聞・中日新聞論説委員
わが国の高齢化率は2011年9月現在、23.3%に達した。一方、同月、厚生労働省から「2009年度国民医療費」が公表され、前年度より1兆2000億円多い36兆円に達したことが明らかになった。
医療費増加には高齢化の進行が大きくかかわるが、すべてではない。厚労省がまとめた「医療費の伸びの要因分解」によると、05年から09年まで一人当たりの医療費の伸びは2.4%。これを要因分解すると「高齢化の影響」がプラス1.6%、「診療報酬改定」がマイナス0.8%、「その他」がプラス1.5%(4捨5入のため合計は一致せず)。この「その他」に「医療の高度化」「患者負担の見直し」が含まれる。
そこで診療報酬改定や患者負担の見直しのない年度で見てみると「医療の高度化」による影響の大きさがはっきり浮かび上がってくる。例えば05年度では一人当たり医療費の伸び率3.1%に対し「高齢化の影響」は1.9%、「医療の高度化」は1.2%。
07年度は3.1%に対し、それぞれ1.6%、1.4%。09年度に至っては3.6%の中で「高齢化の影響」1.5%よりも「医療の高度化」2.1%の方が大きい。
「医療の高度化」は世間で考えられている以上に医療費を膨張させている。通常の工業生産では技術進歩が生産コストを下げるが、医療技術では逆の方向に働くのだ。
そうである以上、医療機器の効率的な利用が今後は強く求められる「医療の高度化」が健康の維持・向上に役立つことは確かだが、わが国のCTやMRIの人口100万人当たりの台数はOECD諸国の中で際だって多い。CTは2位の米国の約3倍、MRIは1.7倍だ。ここまで必要とは思えない。
医療機関は共同利用の道を探るべきであり、その方が新型の機器を早く導入でき、患者のためになる。医療費の不要な膨張を抑制するためにも厚労省はその方向に誘導すべきだ。
薬価と違い、医療機器の販売価格が不透明なことなどが中央社会保険医療協議会(中医協)等でしばしば指摘されている。
内外価格差に加え、同じ機器なのに病院ごとに実際の納入価格が異なる不透明な販売方法がまだまかり通っていると聞く。それらのつけは最終的には国民の負担増となって跳ね返ってくる。AMDDには、より先進的な機器の開発とともに、日本国民の信頼をかち得るような透明な販売を目指してもらいたい。