一般社団法人 米国医療機器・IVD工業会

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報道・医療関係者

病気の予防・診断で国民の健康に貢献する体外診断用医薬品

2011年1月1日

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家次 恒 氏
社団法人 日本臨床検査薬協会 会長

 

米国医療機器・IVD工業会(AMDD)は2010年8月4日、日本臨床検査薬協会(JACRI=臨薬協)および欧州ビジネス協会(EBC)と共同で厚生労働省に対してポジションペーパーを提出しました。それには病気の予防・診断・治療・予後の観察などに不可欠な体外診断用医薬品の役割や3業界団体が直面する課題なども盛り込まれましたが、今回は臨薬協の家次恒会長に同協会の活動内容や臨床検査の重要性についてお話をお伺いしました。

尿検査から迅速診断キットまで

私どもの日本臨床検査薬協会(臨薬協)は、診療に不可欠な体外診断用医薬品を開発/製造/販売する企業の団体です。1989年5月に厚生大臣の許可を得て社団法人として発足しました。現在の会員は120社で、売上総額は4,000億円を超える規模です。主に医薬品卸業者を通じて国内の医療機関に供給していますが、輸出して海外のお客様にもお届けしています。

体外診断用医薬品(臨床検査薬)というのは、治療等に用いる医薬品と異なり、患者さんの血液組織、細胞や排泄された尿、便、痰等の検体から医療に役立つ検査データを得るのに使われています。臨床検査は当初、問診などによる一般診察に対して補助診断とされていましたが、今では病気の診断や治療方針を決めるときに欠かせません。また、職場や学校での健診にも広く活用されており、生活習慣病などを無症状の段階で発見して早期治療につなげるためにも重要です。

最近では新型インフルエンザの感染の有無も、迅速診断キットなどで迅速・簡便に調べることが出来るようにもなりました。また糖尿病の患者さん自身が血液中の糖分(グルコース)を測定することにより血糖値のコントロールも可能になっています。

いよいよオーダーメイド医療へ

臨床検査は病気の診断や治療方針の決定以外にも早期発見・早期治療、さらに予防や予後のモニタリングなどで大きな役割を果たしています。そこで会員各社は、遺伝子解析など最新技術を駆使した新しい検査技術や検査項目の開発にも力を入れています。私どもの願いは国民の健康維持に貢献し、同時に医療費削減に寄与することです。全国どこの医療機関でも高品質な検査結果が得られるように、関連学会や諸機関と協力して検査の標準化を進めています。

遺伝子解析が可能になってから注目を集めているのが「個別化医療」(オーダーメイド医療)です。これは患者さんごとに最適な治療法や医薬品を選ぶことです。あらかじめ遺伝子やバイオマーカーを調べておけば、最も有効性が高く、かつ最も副作用の少ない医薬品が投与でき、すでにがん領域を中心に試みられています。

個別化医療で用いられる体外診断用医薬品を「コンパニオン診断薬」と呼んでいます。しかし現在、コンパニオン診断薬を審査/承認する基準が明確でないため、コンパニオン診断薬の提供が大幅に遅れてしまう事例が発生しています。そこで今、新しい治療法や医薬品の開発と同時にコンパニオン診断薬が利用できる環境を整備する必要があり、体外診断用医薬品の新たな承認審査基準およびそのルール作りが喫緊の課題になっています。

2005年4月施行の改正薬事法では、体外診断用医薬品は医薬品のカテゴリーに組み込まれていますが、国際的整合性を図るため医療機器に近い扱いとなって厳しく規制されています。体外診断用機器と体外診断用医薬品を一つのカテゴリーとし、国際的な規制やルールとの整合化が図られれば、審査評価方法の統一化、海外の製品の素早い国内市場導入も期待できます。

審査過程の改善と項目見直しを

厚生労働大臣の承認を必要とする新しい体外診断用医薬品の審査では、企業からの承認申請はまず独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)に回されますが、ここでの審査の遅れが目立っています。PMDAは体外診断用医薬品の審査期間を6カ月としているのに、この期間に承認されるのは申請の半数以下との統計もあります。そこで臨薬協は2010年8月、AMDDおよびEBCと共同で厚生労働省に対してポジションペーパー「体外診断用医薬品の取り扱いに関する考え方」を提出し、審査プロセスの改善や審査項目の見直し、さらにPMDAの審査官が効率的に審査できる体制の確立などを要請しました。

国民の健康維持に役立つ製品を医療現場に提供することが私どもの重要な使命です。しかし世界各国で使用可能な最新の体外診断用医薬品が日本ではなかなか使用できないという現実があります。日本の患者さんが最新技術を用いた正確な検査結果に基づく最適な治療を受けられないのは非常に残念です。審査の遅れは医薬品や医療機器では「ドラッグラグ」「デバイスラグ」として知られていますが、体外診断用医薬品でも同様な問題が起きているのです。

人口高齢化のほか日本人の生活習慣や社会環境の変化に伴い、今後も生活習慣病や老化に伴う病気が増加するでしょう。そこで重要なのは予防医療の観点で、いかに罹病を防ぎ、健康寿命を延長するかということです。私どもの協会は、より幅広い事業活動を推進するために他の関連団体とも連携を図りつつ、臨床検査薬を取り巻く内外の問題を整理し、日本国民の医療福祉の向上に貢献したいと考えています。

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