一般社団法人 米国医療機器・IVD工業会

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報道・医療関係者

日進月歩は止まらない

2011年1月1日

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大野 善三 氏
日本医学ジャーナリスト協会 会長

 

私は医学技術進歩の信奉者です。ある施設を見学したとき、大型の画像診断機は総てアメリカ、ドイツ製で、日本製は全く見られませんでした。「日本製の機械は解像度が悪く、アメリカ、ドイツ製の方が良かったから、少々値段が張りましたが、これにしました」という説明でした。「日本も精密機械には、技術的に遅れているとは思えませんが?」と訊ねると、「日本製も決して悪くないのですが、1980年代に国内需要に力を入れ過ぎたために、技術的には遅れをとったようです」という答えでした。このとき、技術の進歩は競争を伴って休むことを知らず、絶えず前進し続けなければならないものだと感じました。人の幸福に資する科学技術は、留まることを知らないのです。

いまから40数年前には、アメリカのような技術先進国でも、「覆面委員会」がありました。未だ血液透析が誰にでも適用できる余裕が無いので、秘密裡に選ばれた人による「覆面委員会」が、適用すべき人を選別していたのです。今は日本では、腎不全に陥った人が尿毒症にならないために、人工透析を健康保険で受けられます。全国で30万人近くの人が、これで命を維持しているのです。患者の5%内外が、25年以上も透析を続けています。40数年の進歩です。

以前は、バリウムを飲んでレントゲン検査を受けるか、糞便を提出して潜血反応を観察してもらうかが、胃腸の病変を知る唯一の情報源でした。最近は、内視鏡で疾病を診断してもらうことが多くなりました。医師も、内視鏡技術が体得できていれば、病気を正確に診られるので、この方を以前より採択する方が多くなりました。これも進歩の一つです。

医療行為と言えば、進んだ病気の治療が中心でした。最近は、早期診断・早期治療と言って、たとえがんに侵されていても、早めに手を打てば、尊い命が延ばせる技術が増えてきました。最初に紹介した大型画像診断機も、病気の発見というよりも、病気の発生を事前に知るために使うことが、以前よりは多くなりました。遺伝子探査がそれに輪をかけて、疾病予防に貢献させようと、世界中で研究が進められています。留まることを知らない医学技術の進歩は、病気の発見ではなく、病気の予知に貢献する方向を歩んでいます。診断技術の歩みは、人間の望みを一歩一歩実現するために努力しているのです。いま人類が直面しているがんやアルツハイマー病の発生を予知する診断技術がいつかは発見されるだろうと思います。医学技術開発の歩みは、休むことをしません。

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