一般社団法人 米国医療機器・IVD工業会

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報道・医療関係者

CTやMRIは使いこなせる態勢を

2010年5月1日

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前野 一雄 氏
読売新聞 東京本社編集委員

 

コンピューター断層撮影装置(CT)や磁気共鳴画像装置(MRl)は、最新機器の象徴として広く知られています。ちょっと頭痛や動悸があれば、「CTやMRl検査を受けたら」といった日常会話がなされ、本人も画像で説明されると安心します。

こういった患者ニーズが反映されて、中小病院や診療所にも高額な大型画像機器が普及しました。実際、わが国の人口当たりのCT、MRI設置台数は断トツの世界1位なのです。

このため財務省の財政制度等審議会でも、「日本の高額医療機器数は欧州諸国に比べCTで6~13倍、MRIで4~11倍」と医療費を押し上げる要因として指摘されています。

国内の医療機関にCT、MRIの台数が多いのは確かです。しかし、真の問題はそれに見合った診断がなされているかどうかにあるのではないでしょうか。

機器の性能やスタッフの読影能力で検査の質が大きく違ってきます。が、古い機種でも最新機でも、専門読影者の有無にかかわらず、これまで同一の診療報酬でした。これでは性能の検討や専門スタッフの確保よりも、まず装置の設置を優先する医療機関があっても不思議でありません。

近年、CTは1回のスキャンで断面位置の異なる複数の画像が得られる高性能のマルチスライス機種が主流です。スライス数は2~320チャンネルまで様々ですが、国内には未だシングルCTが半数近くあるようです。MRIも磁束密度が0.5テスラの機種が多く、1.5テスラ以上は約30%に過ぎません。ある調査によると、アメリカでは1テスラ以上が73%も普及していますが、日本は42%だそうです。

専門スタッフの不足はもっと深刻です。わが国の画像診断専門医は、欧米に比べて極めて少ないのです。日本医学放射線学会によると、CT設置施設の80%以上、MRI設置施設の70% 以上で画像診断専門医が不在の状態にあります。画像診断専門医の貧弱さが画像検査の適応診断や装置の精度管理、診断報告書の無発行といった問題につながっているとされます。これでは高額機器が“宝の持ち腐れ"になってしまいます。

このような問題は一朝一夕に解決できませんが、2006年以降の診療報酬改定で、機種の性能や専門スタッフの配置など施設基準に基づく診療報酬の傾斜配分が採用されました。画像診断の質の向上には、機器の適切な運用と専門スタッフの充実が欠かせません。

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