一般社団法人 米国医療機器・IVD工業会

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報道・医療関係者

プロアクティブな対応に声援を送りたい

2018年11月1日

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印南 一路 氏
慶應義塾大学総合政策学部教授

先般開催されたシンポジウム「活気ある国家:生きがいの創出」では、先進医療技術が、患者の生命を救い、生活の質(QOL)を向上させるだけでなく、生きがいの創出にもつながることが強調された。この生きがいの創出は、医療技術の社会における真の価値の一つではないかと再認識させられた。敬意を表したい。

また、AMDDが昨年発表された「バリューベース・ヘルスケア(VBHC)」に基づく諸提案を拝見させていただいた。「イノベーションの価値(バリュー)をきちんと測り価格に反映する償還価格制度、またバリューの高い医療機器やイノベーションにより重点的な資源が投入される仕組みが必要だ」とし、さらに医療システム全体にも気を配り、よりよい制度のための具体的な提案を行っている。

保険財政をめぐる状況は厳しい。一方、高額な先進医療技術が次々と開発されてきている。現在試行中の費用対効果評価制度等に対し、単に反対するリアクティブな対応を取るのではなく、自ら積極的なより包括的な提案を行うというプロアクティブな対応を取られたことは、高く評価されてよいのではないか。以下は私見・要望である。

事例の積み上げが必要

VBHCのご提案にもある通り、イノベーションはたゆまなく進歩し、患者本人の生産性損失の回復、介護コストの削減、ひいては健康寿命の延伸にも寄与するであろう。しかし、これらの価値を皆が納得する形で認めさせるには、実際に数値化された事例を積み上げる必要がある。アカデミックとも協働し、具体的な品目について計算し、現行制度の下での価格と比較すればよい。価格が低くなるものも合わせて、全体的な財政効果を示せれば、より説得力が高くなると思われる。

価値に基づく支払への転換をより強く主張すべき

価値に基づく支払いが本来的に正しく、価値に基づく支払いに転換すべき時期に来ていることには賛成する。とは言っても、現在の診療報酬支払制度は「バリューヘルスケア」の考えが普及する以前からの長い歴史を持ち、ある意味では関係者間で調整に調整を重ね、洗練させてきた制度である。根本的な転換は容易ではない。しかし、その視点から現在の薬価制度、特定保険医療材料価格制度を見直すと、これらは市場で決まる実勢価格を、その医薬品・医療機器材料の「価値」とみなしていることになる。これが一定期限ごとの公定価格の引き下げ、外国平均価格調整を正当化する理屈になっているし、費用対効果評価も結局は補正加算の一部に組み込まれ、しかも主たる役割が引き下げになっている理由である。よりよい価格制度にするためには、エビデンスを蓄積し、その上で価値に基づく支払への転換をより強く主張すべきであろう。

印南 一路 氏
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