一般社団法人 米国医療機器・IVD工業会

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報道・医療関係者

成長戦略としての医療機器

2016年11月1日

キーワード

和泉 洋人 氏
内閣総理大臣補佐官

健康長寿の意義と健康医療戦略

世界に冠たる長寿国日本だが、注目すべきは健康寿命だ。健康寿命とは日常生活に介護など、制限のない期間である。男性の場合、平均寿命と健康寿命の差が9年、女性は12年ある。

安倍政権の日本再興戦略のひとつ、戦略市場創造プランでは、課題をバネに新たな市場を創造しようとしている。中でも「健康寿命の延伸」は大きな柱になっている。

高齢化が進み、このままだと社会保障費は膨らむ一方だが、これを抑えるには平均寿命と健康寿命の差を縮めることが大きなポイントになる。そのため、総理を本部長にした健康・医療戦略推進本部を創設し、現在、推進体制を整え、この課題に取り組んでいる。

医療機器研究開発への取り組み

健康・医療戦略には、医療分野の研究開発、新産業の創出、医療の国際展開、医療のICT化の4つの柱がある。医療分野の研究開発の推進計画においては、基礎研究と臨床現場の間の循環を構築、基礎研究の成果を実用化する体制作りなどを含む10の基本方針、日本医療研究開発機構(AMED)に期待される機能、および9つの連携プロジェクトを掲げている。この9つのプロジェクトには医療機器開発がある。

日本の医療機器市場の規模はしばらく2兆円ほどで推移していたが、2014年に2.8兆円となり、過去最大の規模に成長している。内訳はカテーテルなど治療機器が53%、内視鏡やCTなど診断機器が25%を占める。日本全体の総医療費は約40兆円なので、医療機器の占める割合は約7%になる。

今年6月に閣議決定した日本再興戦略2016でも、医療機器の開発を推進していくことが盛り込まれ、医療機器促進法に基づく基本計画も策定された。それによると、医療機器産業の技術開発で重点的に力を注ぐのは、手術支援ロボット/システム、人工組織・臓器、低侵襲治療、イメージング(画像診断)、在宅医療機器の5分野に及ぶ。

現場のニーズに基づく開発

この取り組みの大きな特徴として、現場のニーズに基づいて開発を進めていくことが挙げられる。AMEDの職員が全国に11ヵ所ある臨床の拠点施設に直接訪ねていき、医師らにニーズについて聞き取りを行い、抽出する。それをベースに新しい研究開発を公募するという試みを行っている。

また、2014年に立ち上げた、医療機器開発支援ネットワークによるコンサルテーションも始まっている。事務局はAMEDだが、全国に71地点の地域支援機関にワンストップ窓口を設置し、医療機器に関する相談を行っている。最近は電気電子、自動車部品、光学や化学など異業種からの相談が相次ぎ、上市までアドバイスをする「伴走コンサル」も増えている。

しかし、早期に実用化しなければ、世界から取り残される可能性もある。そこで、早期実用化のためのバックアップも行われている。

一つ目は薬事法から医療機器の特性を踏まえた医薬品医療機器法への移行である。二つ目は国家戦略特区での取り組み。治験期間を短縮し、開発から承認、市販までのプロセスを迅速化するためにさまざまな制度の整備を進めている。現在、関西、仙台、東京の各特区がある。三つ目はPMDA(医薬品医療機器総合機構)の体制整備や強化と事前相談制度の充実だ。開発初期から指導や助言を行って、早期実用化を促している。最後は、これからの課題になるが、革新的医療機器早期承認制度の構築を検討している。

医療分野における新産業の創出

公的医療介護サービスとは違う次世代ヘルスケアサービスにおいて新産業の創出をはかる。保険外サービスの拡大をしていくためには規制緩和が必要になる。たとえば、自己採血した血液の簡易検査のサービス事業があるが、採血が医療行為に当たるのではないかという懸念が常について回る。こういった場合にグレーゾーン解消制度を利用してもらい、民間サービスの促進をはかりたい。将来的に民間活力をもっと幅広く生かすことを目指している。

ICT化や国際展開について

診療報酬明細書情報(レセプト)はデジタル化や標準化が進んでいるが、問診内容、検査結果などはほとんど進んでいないのが実情だ。これをもっと統合的に使用するために新しい情報収集機関の設置を検討している。膨大な情報を効率的に収集する仕組みを創設する予定である。

また、日本式医療の海外展開はすでに始まっている。アジア健康構想を持ち、おもに介護分野で、急速に進むアジア地域の支援協力をする。 アジア地域のみではなく、国際保健を前進させるために今年の伊勢志摩サミットで「国際保健のためのG7伊勢志摩ビジョン」を発表し、今後のさらなる展開が注目される。

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