一般社団法人 米国医療機器・IVD工業会

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報道・医療関係者

医療機器開発と日本

2015年10月1日

キーワード

内田 毅彦 氏
株式会社日本医療機器開発機構 代表取締役

トヨタ自動車は世界一の自動車メーカーとなりました。自動車産業だけでなく、精密機器、ロボットなど、我が国の技術産業は世界のトップレベルにあり、日本は疑いようもなく世界有数の科学技術大国です。一方、我が国を戦後、世界最長寿国に至らしめた日本の医療レベルもやはり世界有数であると言えます。となれば、科学技術を医療に応用した医療機器産業でも日本が世界をリードしていても不思議はありません。しかし、実際は皆さんがよくご存知の通り、日本での医療機器貿易赤字は年間およそ7000億円もあります。

なぜ日本で医療機器開発が進まないのか

産業活性化にはヒト・カネ・モノが必要と言われますが、私は日本の医療機器産業はこのいずれもが足りないと感じています。臨床重視の日本の医学教育では医療機器開発に対する教育はほとんどなされてきませんでした。医療現場でも医療従事者の仕事は一義的に臨床であって、医療イノベーションを推進している医療機関はほとんどありません。このため、医療従事者にとって、医療イノベーションに対する関心は低いといえます。

また、医療機器は医療と工学が結びつかないとならないのに、医学と工学の連携がうまく育まれてきませんでした。欧米ではバイオ・メディカル・エンジニアリングという医学と工学が融合した学問が確立されていますが、日本ではそれが遅れています。そして、何より医療機器開発の成功体験が少ないため、医療機器の目利きをできる人が少ないと思います。卵が先か、鶏が先かの話で言えば、今はどちらもない状態であり、要するに日本には医療機器開発の産業基盤や循環、いわゆるエコシステム(生態系)がないのです。

医療機器開発の問題点

では、どうしたらいいのでしょうか。

かつて、日本の電子機器産業や自動車産業は、まず徹底的に世界を学ぼうとしました。海外製品をよく研究し、それを改良し、日本の強みに変えていったと思います。医療機器も海外に積極的に学ぶという姿勢がもう少しあってもいいと思います。今の日本には、技術立国として栄えたプライドが邪魔をして、自分たちでもどうにかできると思っている、そんな空気が漂っているようにも思えます。

そして、実際に開発を進める際に必須なのは、開発全体を早いステージから販売開始後まできちんと進められるだけの医療の知識、工学の知識、薬事の知識であり、これらがうまくリンクしないと医療機器は作り込めません。加えて、医療機器開発のビジネスがわかっていないと、良いモノだと思っても、特許や薬事承認でつまずいたり、開発費の調達ができなかったり、他の治療法との競合で負けてしまったりして、結局は成功できません。

「日本は薬事の規制が厳しすぎるから、いつまでたっても日本からの医療機器が育たない」というこの開発をしている日本の方がよくいますが、私はこの言葉はあまり適切だとは思っていません。もし、この言葉が本当なら、日本で承認されて使われる医療機器の数自体が少ないはずです。すなわち、外資系企業は日本の薬事にもきちんと対応しながら、グローバルに医療機器を展開しているのです。日本のマーケットだけを見ているから、上述のような発想になるのだと思います。

さらなる発展に向けて

日本発の医療機器はもうどうにもならないのでしょうか。私はこれまで、世界に展開できそうな優れた医療機器シーズを日本でいくつか見つけてきました。非常に高いレベルのシーズもあります。ですから、上手に育てさえすれば、案外たくさん医療機器が日本から生まれるのではないかと思っています。ただ、育てる土壌がないのではないでしょうか。

そう考えて、現在㈱日本医療機器開発機構という医療機器インキュベータを設立・運営しています。この会社の事業モデルは、大学の研究者などから、医療機器のシーズをお預かりして実際に事業化し、医療機器メーカーにエグジットするというものです。日本では起業家を支える環境が整っていない上、失敗を許さないという文化があり、なかなかベンチャー企業として医療機器を開発しようという人が少ない現状があります。ですから、アイデアからお預かりして、自らが事業化するということを実際に行っています。

外資系医療機器メーカーで働くみなさんは、イノベーティブな医療機器の開発にかかわっていらっしゃいますので、医療機器開発のスキルレベルがとても高いと思います。どんな仕事を選ぶのかは人それぞれですが、高いポテンシャルがありながら毎年7000億円もの貿易赤字を出している日本の医療機器産業のために、そのスキルを活かそうとお考えになる方も少なくないでしょう。

日本の医療機器産業はヒト・カネ・モノの全てが足らない状況です。ぜひ力を合わせて、日本発の医療機器開発も盛り立てて参りましょう。㈱日本医療機器開発機構の取り組みに興味を持って下さった方は、どうかお気軽にご連絡下さい。

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