先進医療をめぐる声

AMDD医療技術政策研究所の設立について

田村 誠 氏
米国医療機器・IVD工業会(AMDD)医療技術政策研究所 所長
医療機器センター医療機器産業研究所 上席研究員
医療システムプランニング 代表理事

掲載:2018年1月

田村 誠 氏

田村 誠 氏

2017年10月1日に設立されました医療技術政策研究所の初代研究所長の田村です。AMDDの保険委員長や中医協専門委員など、保険関係を中心にAMDDの活動にかかわってきましたが、このたび所長職を拝命いたしました。

研究所設立のねらい、当面の活動の方向などについてご紹介いたします。

設立のねらい

医療機器やIVD等の高度化の一方で、国の巨額な財政赤字、高齢化社会の到来などで、医療保険財政はひっ迫しています。医療機器やIVDに対する認知も以前に比べると進んではきていますが、理解はまだ十分とは言えません。こうした中、AMDD各社は、日本の患者様の期待に沿うべく、自社開発製品のイノベーションの適正な評価を希望していますが、現在は厳しい環境です。

昨年、AMDDはバリューベース・ヘルスケアの考え方をもとに、医療材料価格制度に関する具体的な提案を行いました。平成30年度の診療報酬改定ではそのいくつかの要素が取り入れられる方向ですが、こうした厳しい環境下では、確かなエビデンスを元に、医療機器の特性を十分に生かした提案を行う必要があると考えています。
 
これらを踏まえた上での当医療技術政策研究所の設立のねらいは、以下の3つです。

1)海外の状況を含め、中長期の視点で医療機器・IVD産業をめぐる市場・政策環境を調査・研究し、AMDDの関係委員会とともに、日本の医療制度に適した制度・政策を検討する

2)医療機器・IVDについての関係者の理解を深める試みを行なうとともに、AMDD関係者が政府や各団体と協議を行うことを支援する

3)当研究所の持つ知識・経験などをAMDD会員各社のメンバーと共有する

活動の方向

当面、大きな2つの活動を考えています。1つは、医療機器・IVDをめぐる調査研究の実施・推進、もう1つは、医療機器・IVDの製品開発などに関する情報収集とわかりやすい形での情報提供です。なお、私は医療機器センター・医療機器産業研究所の上級研究員も兼務しているので、これらの活動の大半は、医療機器センターと協同する予定です。

<医療機器・IVDをめぐる調査研究の実施・推進>

まず、調査研究はAMDDの医療技術政策研究所として独自に行うことが考えられます。AMDDが昨年、医療材料価格制度に関する具体的な提案を「バリューベース・ヘルスケア」という考え方を元に行ったと先に述べましたが、この言葉や概念は多義的で共通理解が得られにくいという意見があったので、私が関連の議論を整理し、「『バリューベース・ヘルスケア(価値に基づく医療)』の意味するところ」というタイトルの拙稿を著し、本年1月、社会保険旬報に掲載されました。
 
さらに、外部の研究者・専門家と連携して行う調査・研究も積極的に行っていきたいと考えています。

医療機器の製造販売承認や保険償還に関する課題を議論している中、まさにこれから法政大学比較経済研究所で「わが国の「保険医療材料制度」の課題と今後のあり方に関する国際比較研究」プロジェクト(菅原琢磨教授リーダー)が始まることとなりました。これに当研究所が積極的に参加することで、関連委員会と連携をして、業界の課題を明確にし、その上で外部の専門家とともに研究を行うことを推進したいと考えています。

<医療機器・IVDの製品開発等に関する情報収集・提供>

医療機器・IVDの特性を理解していただくこと、さらに親しみを持っていただくために、「製品開発秘話」などを作成し、それをわかりやすい形で関係者に情報提供しようとしています。
 
これについては、慶應義塾大学大学院経営管理研究科(KBS)の後藤励准教授が関心を寄せてくださり、AMDD関係企業などが素材を提供し、ビジネススクールのケースメソッド授業で用いられる医療機器「ケース」を准教授のご指導のもと、作成することを計画中です。
 
「ケース」は、ある程度深い内容の情報となりますし、さらに物語仕立てなので、医療機器をあまりご存じない方でも、容易に理解できる内容になるのではないかと期待しています。

まだ、産声を上げたばかりの当研究所ですが、皆様方からさまざまなご助言をいただきながら成長していきたいと考えています。ご指導のほど、なにとぞよろしくお願いいたします。